eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

2018-11-20から1日間の記事一覧

天泣 9

極端に物が少ない家は掃除や片付けもすぐに終わってしまう ハニはベランダからぼんやりと空を見上げていた 背後の窓にかかるカーテンが風に煽られ、パタパタとはためく 青い空には小さな雲が可愛らしく浮かんでいる 目を下にやると小さな人影がいくつも見え…

天泣 8

カチャリ、と扉が閉まる音が背後に聞こえハイヒールのストラップを外そうと足元に手を伸ばしたハニをキーが包んだ 「だめ、靴 脱がないで」 髪をかきあげられ現れた首筋に唇を落された 「...キーさん」 胸元に伸びた手首を掴み抵抗したハニの手はキーの力に…

天泣 7

「ハニさん?」 「私は、、私の心は あなたのものではないから」 自分の気持ちを口に出し改めて自身の心に気がつく 私はキーさんを結婚するほどに愛していない 大好きだけれど愛とは違う 「……心?」 キーは指先で自分の亀裂のある眉をゆっくりなぞる 「……心…

天泣 6

バス通りに面した一角にあるビルのエレベーターにハニは乗り込んでいた 最上階を押す 仕事が立て込んでいるキーから自分のオフィスへ来て貰えないかと言われたのだった エレベーターを降り前方の扉をノックするとすぐにキーが出てきた 案内されたのはソファ…

天泣 5

店の客として再会した偶然に驚いた二人は改めて一緒にお茶を飲む時間を設けた 聞けば海外出張が重なりそうなると連絡もなかなか出来ないのだという事であった 「変わった、お名前ですよね」 「Keyですか?本名はちゃんとありますそれは僕の通名なんです」 「…

天泣 4

それから何日か仕事は休んだ 暗がりの中力で押さえ込まれ自由を奪われた恐怖が体から抜けなかった 日が経つにつれ助けがあった事への感謝の念が湧いてきた あの時自分は何も言えず そのまま別れてしまった 布団から滑り出しバッグを探す 男から渡された名刺…

天泣 3

ハニが完成した豪奢な建物に住んだのは三ヶ月にも満たなかった 父の経営する会社の業績が悪化し一家の暮らしは激変した 会社の規模を縮小し立て直しに全力を注いでいた父は労働者との軋轢や借金を抱えいつも疲弊していた 大学卒業後、家事手伝いとして両親に…

天泣 2

窓際に立つ女にまだらに影が揺らめく 女が放つ自分を拒絶する空気を敏感に感じとり近寄る事も、声を出す事も出来ない 「……あ」 女の声にハッと顔を上げる 「てんきゅうだわ」 そう言って女は空に向かい腕を伸ばす ガラス窓に腕を伸ばしぴたりと体を寄せる そ…

天泣

私は どこにも 行かない あなた、 だけの そばに います あなた 、 だけを 愛して います ハニが初めて夫となる男に会ったのは住宅展示場だった 自宅を新築する事になり両親がハニと弟のイルソンを連れて設計士との打ち合わせに同席させた 自分の希望を伝え…

大好きの魔法

はあっ はあっ 吐く息は白い煙となり顔の周りでぶわりと渦を巻いて左右へ 、 自分の後ろへと流れてゆく いくつもの白い煙を置き去りにしながらチャンミンはひたすら足を前に動かす 雪を踏みしめる音 木々から落ちる小さな雪片 歩く度に擦れる服の音 湿った森…

神の留守〜飴細工の川 9

かつて焼け野原になった果樹園は緑柔らかな草地となっていた 力強い風が吹き渡ると葉はしなやかに揺らめき緑一色だった草原は銀色に姿を変えてたなびいた テミンは車に鍵を残しドアを開けたまま 歩き出した 幼い頃にオニュと見た桜並木は まだ、そこにあった…

神の留守〜飴細工の川 8

細かな水滴が、フロントガラスに柔らかに降り注ぎ白く視界を遮りだした シートに預けていた銀髪を持ち上げ指先を伸ばしワイパーのスイッチを動かす カチリと柔らかな音を立てワイパーが水滴を一掃した 目標の車を見たテミンはシートベルトをかけハイビームで…

神の留守〜飴細工の川 7

鋭利な刃物で切り開かれた喉元からダクダクと血が流れだし花を染めベッドへと染み込んでいた 髪をかきあげたテミンはナイフを手にバスルームに向かった 熱いシャワーで体に飛び散った血を洗い流しバスタブに両手をつき体を屈めた 偽物のひまわりが湯を吸い込…

神の留守〜飴細工の川 6

幾百という花たちの視線を浴びながら二人の男が交わりあっている 黒いシャツを纏い両手を手錠で拘束されたテミンがビンに貫かれていた 「なあ…サヨの丘だけど…あんたが捨てた死体って誰だったの」 「…あ?まだ、言ってんのか」 「気になるんだよ」 フフっと…

神の留守〜飴細工の川5

大きな木が、ふわふわとした白い花を纏わせ川沿いに立ち並んでいる 木と木の間には裸電球がぶら下がり夜でもなく、昼でもないどっち付かずな光源をジリジリと放ち出しておりその灯りの下で幾つもの屋台が店を連ねていた 雑踏の中、ある職人の店から離れられ…

神の留守〜飴細工の川 4

ビンは割り開かれた黒い布地を両手で押し広げた 華奢で筋肉などないかのような外見なのに思った以上にしっかりとした体だった しかし、力では負けないだろうビンはそう思った 両手を白い素肌に這わせると若々しく滑らかな肌が手のひらに吸い付いてくる ゆっ…

神の留守〜飴細工の川 3

「こうしないと俺に近づけない?ビンさんは」 ビンの指示によってテミンは自ら手錠をかけていた 「…黙れ」 揺らしていた足の動きが神経質に素早く揺れるのをテミンは見つめていた 微かに聞こえる空調の音だけが流れる部屋の中花に囲まれ立つテミンは美しい造…

神の留守〜飴細工の川2

薄暗いベッドルームにも花は満ち溢れていた 大きなダブルのベッドの上に敷き詰められた花は布地を隠し甘い花の香りが暖かな空調の流れと共に押し寄せてきた 椅子に腰掛けていた男は組んだ足先をユラユラと揺らし「どうだ?ここまでした男はいないだろ?」と…

神の留守〜飴細工の川

明るい日差しがアスファルトに描かれている横断歩道に降り注いでいた 凍てつく空気の中を自転車で走り去る子供 北風に煽られベビーカーの日除けを深く下ろし歩く母親 地面を一心に突きながら行きつ戻りつしている鳩 明るく突き刺さる陽射しの元生ある者の営…

Rainy Blue 41

その後、あの男は別件の性犯罪で摘発され警察に拘留されたようだった オニュは叔父の家を離れかつて暮らした地元に戻り一人暮らしを始めた 殺風景な男の一人暮らしの窓際に時々、花が生けられていた 時には店売りの立派な花の時もあったが大抵、道端で咲いて…

Rainy Blue 40

オニュと行きたい場所があるそう言ってテミンの運転する車に乗せられオニュは郊外へ来ていた 朝から曇りがちだった空には水分をたっぷりと含んだ分厚い雲が連なり今にも雨粒を落としそうだった 「…テミン」 ついた場所は墓地だった 「ヒョン、一度も来てない…

Rainy Blue 39

翌日は曇り空の冷え込んだ日だった 長めの上着を羽織り凶器を忍ばせ病院玄関の見える公園で男を待った オニュの思考はアオに飛びこの役目が終わってアオの世界に 安息の世界に行けるのを待ち望んだ 何も食べず何も飲まず全神経を尖らせ待ち続けた やがて、人…

Rainy Blue 38

外に出たその日からオニュは男の入院先を探した テミンや、叔父、アオの家から度々電話があったが出なかった それは二軒目ですぐに見つかった受け付けで男の名前を言い見舞いの旨を伝えるとあっさり病室を教えてくれたのだ オニュは男の退院時に狙いをつけそ…

Rainy Blue 37

オニュは考えを巡らせた テミンが話した事によりあいつも埃を叩かれるだろう あいつが手の届かない所に行くのを阻止出来るだろうか または、行く前にチャンスはあるだろうか 静かに内省しているかのように見える外側と違い内面では、男を殺したいという燃え…

Rainy Blue 36

殺されかけた男は救急車で運ばれオニュは警察車両に乗せられた 「待って下さい待って下さい! 事情があるんですお願いします!事情を聞いて下さい! 僕も連れて行って下さい!僕が話します!」 テミンの声が聞こえてきたが心は動かなかった オニュは小突かれ…

Rainy Blue 35

鋭く尖る瓶を片手にゆらりとオニュは立ち上がった 背後を振り返り男を見た 自分と歳が変わらないような若い男だった オニュは一言も発せず鋭く手を振りかぶり男めがけてビンを振り落とそうとした しかし、その手をテミンが抑えていた 「ヒョン!」 「…離せ離…

Rainy Blue 34

アオの一周忌は身内だけで行われたがオニュとテミンはアオの両親に自宅に招かれアオを偲ぶ場を設けられた 「オニュ君、あなたがここに来るとねアオも喜んでいるのがわかるの あの子は私の中に今も一緒にいるのよ アオが心配してるわよオニュ、ご飯食べてるの…

Rainy Blue 33

オニュは黙って自分の身なりを整えた ユーキの衣服も直してやるべきだと思ったがどうしても、手が出せなかった 壁に寄りかかり、離れたまま話しかけた 「先輩、すみませんでした 俺、あなたとはもう会いませんバイトも辞めます」 「ジンギ、ごめん飲み過ぎた…

Rainy Blue 32

アオがオニュの前から消え一年が過ぎた 色も香気もなくなった世界でオニュは、ただ日々を過ごし淡々と過ごしていた バイトも続けていたが惰性で続けているだけだった 仕事終わりにユーキに飲みに誘われ断るのも億劫で付いて行った 「さあ!ジンギ、飲みな!…

Rainy Blue 31

アオはもう いない オニュにはアオは自ら望んで1人で逝ったのだとわかっていた あの時、もっと聞いていれば…もっと聞くべきだったんだ聞く時間はいくらでもあったのに俺はそうしなかった アオは救いを求めて俺の所に来た いや、違うそれだけではない アオは……