eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

神の留守〜飴細工の川 8

 

 

 

 

 

 

 

 

細かな水滴が、
フロントガラスに柔らかに降り注ぎ
白く視界を遮りだした


シートに預けていた銀髪を持ち上げ
指先を伸ばしワイパーのスイッチを動かす


カチリと柔らかな音を立て
ワイパーが水滴を一掃した


目標の車を見たテミンは
シートベルトをかけ
ハイビームでライトを点灯させた


雨に濡れた道路が
ライトに照らされ
黒い沼のように浮かび上がる

 

 


焼き尽くされた黒い土地
絶望
あの日の光景がテミンには見えた

 

 

沸き上がる衝動のまま
クラッチを左足で荒々しく踏み込み
ギアを入れる

右足でアクセルをふかし
サイドブレーキを外した

 

目指す車に向かい 
ギアをチェンジアップしていく

雨に濡れた路面は
境界を飲み込み黒光りして
茫洋と広がっていた

 

二速、三速、四速、
トップギアに入る頃には
到達していた

 

運転席側から回り込み
スピードを一層上げながら
獲物に到達したテミンの視界に
驚愕した男の顔が飛び込んできた

 


激しい衝突音を立て
二台の車は絡まりあった

 

衝突の弾みで前方に飛び出したテミンは
即座にバッグにギアチェンジし
アクセルを再び全開で踏み込んだ


車体は激しく軋みながら
鉄の塊にめり込む

 

 


車から先に出てきたのは
額から血を流したテミンだった

 


雨は大粒に形を変え
路面に飛沫を上げて降り落ちていた

  


警報のように鳴り続けるクラクション

 

 

全身に雨を浴び
無表情で車に近づく
テミンの手には
ライトに照らされ
鈍く光るナイフがあった


シートベルトをしていなかった男の
ダメージはテミンの比ではなかった

 

運転席から男を引きずり出し
路面に叩き落とす


男は胸元から力の入らない手で
拳銃を出し
テミンに狙いをつけようとした

 

即座に手首をテミンの足に踏み潰され
拳銃は黒く光る路面に投げ出された

 


「何だ...誰だ」

 


降り落ちる雨に男は目を瞬いた

 

「神はどこだ?」

 

「......あ?」

 

「流せないものもある」

 

 


白い銀髪を額にかき揚
テミンは手中のナイフで
男の喉を掻き切った


ダルは疑問の答えを聞く事なく
大量の血飛沫を撒き散らし
生を終えた

 

路面にギラギラと光る油面
男の流す黒い体液が混ざりあい
小さな水流が出来ていた

 

 

 

 

 

 

その水たまりにばしゃりと
足を踏み込みテミンは歩き出した