eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

神の留守〜飴細工の川 9

 

 

 

 

 

 


かつて焼け野原になった果樹園は
緑柔らかな草地となっていた


力強い風が吹き渡ると
葉はしなやかに揺らめき
緑一色だった
草原は銀色に姿を変えてたなびいた

 


テミンは車に鍵を残し
ドアを開けたまま 歩き出した

 

幼い頃にオニュと見た桜並木は 
まだ、そこにあった


大きく枝を張り出し
互いに枝を差し掛け合い
美しく咲きひろがっている


薄桃の天蓋から絶え間なく
ヒラヒラと花びらが舞い落ち
それは見渡す限り
降り積もり
白く道を浮かばせていた

 

テミンは白の道を歩む

 

胸が踊り
駆け出したくなった

 


白のトンネルをテミンは駆ける

 

 

 

朝靄の中
焼き尽くされた果樹園

火が放たれた家

白く立ち上る燻る煙


靴や鍋、焼け落ちた柱の中を
雨に打たれながら
仲間を探す幼いテミン


激しい絶望は憎しみに変わり
テミンの生きる糧となった

どんな闇に落ちようと
どんな泥水に体を投げ出そうと
その影は美しい顔立ちを穢すことなく
テミンの内包で分厚く堅固に
芯を張っていた

 

 


テミンは全てを忘れ
走る

 

 


笑っていた

 

 


花筏を見つけ
心からの笑顔を、浮かべた

子供の頃以来の笑顔だった

 

 

裸足を白い水面につけ
体を沈めてゆく

 


力を抜き仰向けになり右手を上げると
びっしりと花びらが腕に張り付き
テミンはニッコリと笑う

 

 

 

 

僕の体 全てが
花びらに侵食されればいい

 

 

 

花筏の一つになって 
会いに行く

 

 

 


飴細工の川は
甘く 暖かく 僕を運ぶ

 

 

 

 

 

 

end