神の留守〜飴細工の川 3

「こうしないと俺に近づけない？
ビンさんは」

ビンの指示によって
テミンは自ら手錠をかけていた

「…黙れ」

揺らしていた足の動きが
神経質に素早く揺れるのを
テミンは見つめていた

微かに聞こえる空調の音だけが
流れる部屋の中
花に囲まれ立つテミンは
美しい造り物のようだった

この美しい顔を苦痛に歪ませ
毛穴など一つもないような体に
汗を流させる

ビンはテミンを見つめながら
想像していた

だが一方、この男テミンは
殺戮の衝動を常に内蔵している
非常に危険な人物である事も承知していた

ビンは立ち上がり
無表情に立つテミンの肩を押し
ベッドに突き倒した

大きな揺れにベッドから
花がいくつも転がり落ちた

押し潰された花からは濃厚な香りが
立ち昇る

テミンに覆い被さり
ビンが聞いてきた
「なぜ、やってる最中にベクを殺したんだ？」

「知ってどうする」

「好奇心だよ
答えろ」

「ニセモノ」

「なに？」ピクリとビンの眉が動いた

「造花があった」

極彩色の花々の中で
血を流し死んでいたベク

それだけで…？

「あんたも」

テミンの言葉に気持ちを引き戻され
視線を戻すと
無感情なお面のような顔が自分を
見上げていた

「俺の条件を飲んだよな

俺との約束が守られない時は
殺されても構わない
部下にも追わせない」

「そうだ
無抵抗に殺られはしないがな」

「ねえ、あんた…
サヨの丘の襲撃グループにいたよな」

唐突に変わる話題に男は
上体を起こした

「……何？」

「あん時の死体、どこにやったの」

「お前…」

テミンは繋がれた手を引き上げ
黒いシャツのボタンを一つ、一つと
外して行った

黒の布地を割り
真っ白な皮膚が覗き出した

「……あんたに出来るかな」

唇を歪め、テミンは嘲笑した

「俺を抱く事が」