しゃいに兄弟の砂時計 31

七月～朝顔

強烈な陽射しがアスファルトに
照りつけていた

揺らめき立つカゲロウの中に
黒い日傘を差した女が立っている

減速したタクシーが
ウインカーを出しながら
女に近寄り
ドアがスッと開いた

女は日傘を折りたたみ
腰を車内に落とし
ほっそりとした両足を続けて入れ
タクシーに収まった

パタン、とドアが閉まり
タクシーは再び走り出した

エアコンの効いた車内は静かで
車線を変更する度に
ウインカーの音がカチ、カチと
響く

「オニュ」

オニュはバックミラー越しに
女を見た

ほっそりと柔らかそうで
甘い香りの漂う女

鮮やかな黄色い
カシュクールワンピースを
着ていた

鏡越しに視線が合い
女はふわりと笑ったが
オニュは無表情だった

「オニュ、展望台までお願い」

オニュは視線を
前方に戻し運転に集中した