eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

待ち合わせ 10

 

 

 

 

 


オニュはスポンジのように
萎えて力の入らない足を引きずり移動した

 

目に焼き付いてしまった
汚らわしい光景を消し去ろうと努力した

オニュにとってセックスは
愛する人と気持ちを交歓する事が前提であり
性を売り物にした善悪のない腐敗した
行為を見てしまった事で
自分がまた、一段、穢れた人間に転がり落ちてしまったと感じていた

 


何軒も回り、罵られ侮蔑され
店から蹴り出された


そして
とうとうオニュは仕事を得られなかった

 

 


テミンの待つ部屋に帰る前に
公園に立ち寄り頭から水を浴び
何度も何度もうがいをした

ベタつくドアノブの感触を消し去りたくて
手が痛くなるまで洗い続けた

 


体は疲れきっているのに
感覚は研ぎ澄まされ
暗闇で蠢いていた男女の姿が蘇り
自分の下半身が力を持ち始めた事に
また吐き気を覚えた


薄汚れた異臭の漂う公衆トイレの中で
オニュは自分の下半身を擦り上げ
腰を揺らし、ビクビクと放出させたが
その顔に快楽はなく


罪悪感が澱のように溜まっていった

 

 


明け方に部屋に滑り込んだオニュは
テミンの寝顔を見つめた


白く柔らかな頬
規則正しく上下する体


ふと見るとお皿に紙が被せてあった
紙には

 


オニュヒョン
おかえりなさい
のりまきを作ろうとしたけど
のりも しおもなかったね

ごはんだけになっちゃった
たべてね

 

 

 


テミンの字で書いてあった

 

 

静かに紙を取り除けると
自分の分のお米を取り分けてくれたのだろう
棒状にまとめようとした努力がわかる
米の塊があった

 


しばらくその皿を凝視した

 


心臓が苦しい程にドクドクと
大きく跳ねているのを感じながら
震える指で米を取り上げた

 

 

 


形にならなかった米が
ぼたぼたと皿に落ちていった

 

手に残った米を口に押し込み
噛み締めると
オニュはもう、我慢が出来なかった

 


テミンを疎ましく思った事
自分より明らかに知性も品もない人間に
罵られ辱められても耐えた記憶

薄汚い公衆トイレで
獣のような性交を思い出しながら
吐き出した事への罪悪感

 

 

 


全てが混じり合いオニュの心は
決壊した

 


漏れ出る嗚咽をテミンに聞かせまいと
体を丸め突き上げる慟哭に
両手を口に強く押し当て
激しく震えた

 

 

 

 

 

翌朝、いつも通りの顔で
テミンを起こし白湯に昨夜のテミンが作ってくれた残りの米を入れて食べさせた


「でも、オニュヒョンは?」


「ヒョンはもう、行かなきゃならないから
いいんだ!

テミナ~、昨日のご飯、美味かったぞ~
ヒョンは嬉しかったぞ!
ありがとな、テミナ!」


恥ずかしそうに
うんうんと頷いたテミンと
目を合わせて笑い合い

今日こそ、仕事を見つけるのだと
力が湧き上がるのを感じていた

 

 

 

 

疲れ切った体を気持ちだけで動かし
地下に続く狭く急な階段を降り
扉を開けた


店内は今までの店と比べると
掃除が行き届いており
カウンターに6席
テーブル席が2席
カラオケをするための場所か
1畳ほどの小さな場があり
一段高いステージとなっていた

カウンターの中には目尻の下がった
中年男
肩を剥き出しにしたワンピースを着た
金髪ウィッグの女がいた


だがオニュは 
全く気がつかなかった

ピアノだけを見ていたのだ