Rainy Blue 18
引越しが終わり慌ただしい数ヶ月を過ごすうちに
駅で感じた胸騒ぎは
ふとした時に思い出す程度になり
頻繁に交わすアオとの電話で
気持ちも落ち着き
新しい生活のリズムにも慣れてきた
オニュは自立への最短距離を描き
資格取得や試験のために限界まで授業を組み立て
アルバイトも始めていた
体はきつかったが未来への夢に向かって
着実に歩いている実感で
喜びも大きかった
夜の居酒屋で一緒に働く仲間や
学校での知り合いも徐々に増え
居場所が出来つつあった
「お疲れ様でしたー!」
賑やかな居酒屋での仕事を終え
従業員室から出ようとする時
「ジンギー、一緒に御飯食べに行こーよ」
ユーキの声が飛んできた
ユーキはオニュより3つ年上の女性で
いつも元気に笑っているという印象だった
「すいません、俺、用事がありますので」
「ふーん、じゃあ、またね~」
ガヤガヤと話し声の響く部屋から
出て駆け足で外に出た
自販機にコインを入れ
温かいドリンクを買いガードレールに腰掛け
携帯で電話をかけた
「…し、もし」
「アオ?寝てた?」
「オニュ、おかえり…」
アオの声を聞きながら
夜空を見上げオニュは笑っていた
今日が何曜日だったかも
わからなくなるような
目の回る日々でアオと話せるこの時間が
オニュを支えていた