Rainy Blue 11
引越し一週間前になり
部屋の片付けも、あらかた終わり
長年暮らしてきた家が必要最小限の物だけ残され
あちこち、剥き出しになっていた
縁側に座り空を見てると
「ヒョン~これ、もらってもいい?」
テミンが長年欲しがっていた
レアなフィギュアを持ってやってきた
「…お前、諦めないヤツだな」
「ヒョンはさ、もういい歳なんだから
こんなのいらないでしょ?
マンネの僕に譲っていったらどうかなーって」
「丁寧な雰囲気を出しつつも
欲望丸出しだな」
「ねーー!ヒョン~
お願~~い!」
「いいよ
テミンにあげる」
「え!うそ!
やったあ!
絶対、絶対無理だと思ってた!
たまにはヒョンも太っ腹だねえ~!」
「…お前、一言余計だぞ」
玄関のチャイムが鳴り出て見るとアオだった
差し入れにと、持ってきてくれた
海苔巻きや唐揚げをテミンも一緒に食べた
小さな昔に戻ったかのように
よく喋り笑った
「さてと、僕は家に帰ってコイツを部屋に
飾らなきゃ!
見てよ!アオちゃん、このフォルムを!
今日からコイツは僕んちの子なんだー
お二人はごゆっくりね!」
テミンはアオに近寄ると耳元に口を寄せ
ヒソヒソと耳打ちし
アオは顔を両手で隠してしまった
「テミン!お前、何言った!」
「べーつに?何も?
オニュの目つきが変わったら危険信号だよ!
なーんて、一言も言ってませんよ!」
「テミンーー
デコピンを忘れたか?」
だが、テミンは玄関の鍵閉めなよと言いながら
既に走り去っていた
オニュは立ち上がり玄関に向かい
カチャリと鍵をかけた
その音が静かな家に響きアオにも聞こえたに
違いないとオニュは思っていた