eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟のいちご飴②

 

 

 

 

木の葉のすっかり落ちた大木が
左右に立ち並ぶ並木道に
いくつもの提灯が浮かぶように
夕闇に浮いていた


歩道を挟んだ両脇にびっしりと
屋台が立ち並び
地面が見えない程に人が行き交い
ゆっくりと人波が動いていた


オニュの背中に背負われたテミンは
どこまでも続く店の連なりを見て
声を無くしていた

そんなテミンを左右から覗き込む兄たちが
笑顔で言った

「よし!テミナ!お祭りデビューだ」

「兄ちゃんが教えてやるからな」

「お小遣いの上手な使い方を
教えてやるからな」

「よし!ヒョン行こうぜ」


子供たちは、目当ての店を探して
人混みをかき分ける

唐揚げ、チヂミ、肉巻き
決して多くはない、お小遣いで
厳選した物を買い
みんなで分け合うと
わずかばかりの食欲が満たされるばかりで
なかなかお腹いっぱいにはならなかった

しかしテミンは
どんなに兄たちが勧めても
食べようとしなかった

クジやヨーヨー、ボールすくいを見ても
兄たちの背中から降りようとしない

「テミナ〜、どうしたの?」

「テミナ、欲しいのなかった?」

「人がたくさんでいやなんじゃない?」

ジョンヒョンの背中に
乗り移ったテミンは頬をジョンヒョンの
背中に当て頭を振った

「母さんに会いたくなっちゃった?」

ミノが除きこむとテミンは顔を隠した


「今日はもう帰るか?お金も無いし」

オニュが言うとこくんと頷き
オニュの背中に腕を伸ばす


「よし、帰ろ」


兄弟が人混みと反対方向に向かい
歩き出し
歩道から外れ角を曲がると
ぼんやりと灯りが点いている
屋台が一軒ポツンと見えた


「...こんなとこに屋台がある」


屋台の前まで来た時にテミンが
オニュの背中を滑り降りた


「テミン?」

「ください」


テミンはぼんやりとした灯りの下で
赤く輝くいちご飴を指差し
はっきりと言った


「...300円だよ」


屋台の暗がりから声がした


「...テミナ、ごめん、250円しか
もう無いんだ」

「テミン買えないよ」


小さなテミンの目に透明な涙が盛り上がってきた


「あわわわ!テミン、テミナ!家に帰ったら飴ちゃんが、あるぞ?な?」

「また、今度買おう?ね?」


兄たちに囲まれテミンは屋台から
背を向けた


「...いいよ」


兄弟が振り向くと屋台の主が
いちご飴を差し出していた

 

「250円」


それは、並んでいるいちご飴の中で
一番、小さないちごだった  

しかし、上から光るオレンジ色の光を受け
いちごは糖衣を鈍く光らせ
宝石のように見えた

「うちのいちご飴はね、
魔法のいちご飴なんだ  
不思議な飴なんだよ」


ぼそぼそと喋る屋台の主が
屈んでテミンにいちご飴を渡す時
顔が現れた

 

痩せたその顔に大きな瞳が
輝く異国風な顔つきの若い男だった


オニュから金を受け取ると
「毎度」

それだけ言って再び暗がりへと
引っ込んだ


「テミン 良かったな!」


兄たちに囲まれ
テミンはうっとりと赤く光るいちご飴を
見つめた

「テミナ、食べてみな」

小さな舌を出し
ぺろりと舐めると、カリッと糖衣に
小さな歯を立てる

周りを囲む兄たちの
喉がゴクリ、と上下に動いた

小さなテミンは夢中でいちご飴に
齧り付きあっという間に
食べ終わってしまった


「...美味しかった?」


唾を飲み込みながらミノが聞いた


大きく頷いたテミンを見て
兄たちは笑顔になる


「帰ろう」

「テミン馬跳び教えてやる」

「えー、今?普通に帰ろうよ」

「馬跳びしながら帰った方が楽しいだろ?」

「は?意味わかんない」

オニュが屋台に頭を下げ
兄弟の後を追う


「ヒョン〜早く早く」

 

テミンのために
這いつくばるほどに背を屈めた
兄弟が道に並んでいた