eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟の砂時計〜番外編⑦

 

 

 

 


八月〜テミンの夏休み

 

 

 

 

 

夕暮れから夕闇へと移り変わる空に
先の尖った白い月が浮かんでいた

 

 


カナカナカナカナと空気を震わせる
鳴き声が坂道を登る三台の自転車の周りに響く

 

 


「…ハアっハアっ」

 


「ジョンヒョナ?代わろうか?」

 


「…いいっ」

 

 

 

サドルから腰を浮かせ
重心を左右に振り
一漕ぎ、一漕ぎ進むジョンヒョンは
汗だくになりながら
ミノを乗せていた

 

ピョンと飛び降りたミノがジョンヒョンの
自転車を押す

 

 


「あ〜!ずるい!
ミノヒョン、俺も押して〜」

 

 

「テミナ〜待ってろよ〜」
振り返り叫ぶミノ

 

 

「お前、自分で押せるだろ〜」

 

 

「僕、無理です」

 

 

「僕とか言うな
ウザ  小学生、本当ウザ」

 

 

「あ!禁句!
禁句言った人発見〜
オニュヒョンに言っちゃお〜


オニュヒョーーーン!!」

 

 


「うるせえなあ、オニュヒョンの名前
町中で叫ぶなよ
犬が合唱始めるだろ〜?」

 

 

「だって、ほら!
あれ、オニュヒョンだよ!」

 

 

ハアハアと項垂れて自転車を押していた
キーは顔を上げた

 

 

灯り始めた街灯の下に
頭にタオルを巻き
タンクトップに短パン、サンダルという
男が立っていた

 

 

「あ、本当だ
オニュヒョンじゃん」

 

 


ジョンヒョン、ミノ、キー、テミンと
オニュの元に集まり
一斉に喋り出した

 

 


「ヒョン、おかえり」

 

「どこ行ってたの」

 

「汗だくだな!」

 

「ヒョン、聞いてよキーヒョンね」

 

「手に持ってるの何?」

 


オニュはバイト先からチキンを
買って来ていた

 

 

 

「やったあ!!」

 


「今日、給料日だから。
みんなで、食べような」

 

 

「オニュヒョン、かっこいい…」

 

 


テミンの呟きに
みんなが笑った

 


「ヒョン、それカゴに入れなよ
乗せてってあげる」

 


「ねえねえ、馬跳びする?」

 


「「しねえよ!」」

 

「自転車どうすんだよ、テミン」

 


いいじゃん、やろうよ
やんねえよと騒ぎながら
家族は坂を登る

 


じゃあ、ミノ競争しよ?とテミンは
駆け出した

 

条件反射的にミノは走り出し
すぐにテミンに追いついたが
テミンはミノのTシャツを引っ張り
行かせまいとした

二人はわちゃわちゃと
縺れてキャッキャと笑っていた

 

オニュはテミンが置いていった自転車を
引き坂道を登りはじめ
ジョンヒョンとキーも続いた

 

テミンはミノから離れ
一人坂道を走る


体を傾け自分の息遣いを聞きながら
何がおかしいのかもわからず
笑いながら駆け上がる

 

坂の上から兄たちを見下ろすテミンは
幸せだった


大好きな家族がいる

大好きな家族が笑っている

明日も明後日もその先もお休みで

明日も今日と同じ幸せな一日がくると

テミンは信じて疑わなかった

 


振り返れば
しゃいに兄弟を待つ家がそこにはある

 


母が作る食事
父の帰りを待つ指定席

 


テミンの世界は幸せに満ちていた

 

 


細く美しい三日月が
空に浮かんでいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


終わり