eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟の砂時計〜番外編 冬の星

 

 

 

〜冬の星〜

 

 

 

 

 


リビングの柱時計が
時を刻むその部屋で
一人の男が眠っていた

 

 

 

 


ブー、ブー、と振動する携帯が
静かな室内に響いた

 

タツから腕が伸びる

 


携帯を掴みアラームを止める腕は
半纏を着込んでいる

 

ボサボサの頭に
開ききらない目を眠たそうに
腫らしたオニュが起き上がった

 

 

「...10時」

 


メールの確認をしたが
まだ、連絡は無かった

 

「友達と喜んでるのかな...」

 

キーの進路の合否が発表される時間であった

 

キーなら必ず受かると先生に
何度も太鼓判を押され、
試験を受けたキー本人も
手応えを感じており
受かるであろうとみんなが信じていた


夢に向かいたくさんの努力を
続けてきたキーを見ていた家族は
その結果が報われるものに
なりますようにと願っており

また、しっかりしたキーなら
受かるに違いない、
キーならどんな所でも
必要とされるだろうと
誰もが思っていた

 


オニュはだるい体をコタツから
無理矢理、動かし
天板の上に転がっていた
リップクリームを見ると手に取った

 

「...誰のかな」

 

かぽっと蓋を外し
カサついた唇に塗り込み
上下の唇を押し付けあい
んぱんぱとした

よっこいせ、と独りごち
今夜のお祝いにと唐揚げの下準備を
始めるべく台所に立った


肉をさばき、下味を付けて
時計を見る


10時半を過ぎていた


そろそろ、休み時間かなと
ぼんやり考えていたら携帯が鳴った


キーからであったが
メールではなく、着信だった


オニュは慌てて手を洗い
携帯を手に取る

 

「もしもし?」


しかし、何の応答もない

もしもーし?と問いかけ
電波が悪いのか、と思った時

 

小さな声が聞こえてきた

 

「もしもし...」


「キー、キー?どうした!」


「...だった」


「え?」

 

「...っダメ、だった!」


「......!」


「...ッヒョンっ

おっ、俺っ...

落ちてたっ」

 

 

オニュは、一瞬の間に様々な感情が
押し寄せるのを感じていた

 


「...っごめん

ごめん、ねっ

ヒョンッ」

 


背後には、生徒のざわめきが微かに
聞こえ
キーの噛み殺した嗚咽が聞こえる

みんなが受かるに違いないと思っていた
期待をキーは充分に知っており
また、家庭の事情からいっても
必ず勝ち取りたかった進路でもあった


期待に応えられなかったと
悲しむキーの気持ちが
痛いほどに伝わり
こんな時に周りに謝るなんて、
とオニュは胸が痛くなるのと同時に
どんなにキーがこの合格を望んでいたのか、身にしみて感じていた

 

「キー、悔しかったな
残念だった」

 

「...っく」

 

こんな風に泣くキーはいつ以来だろう

小さな時のキーの姿がオニュの
脳裏に浮かぶ

 

「...大丈夫だ、キー」

 

オニュは涙を隠し
語りかける

 

「大丈夫

また、みんなで考えよう、な?

だから、帰って来い」

 

「...ッふ」

 

どんな言葉も足りない気がしたオニュは
それでも、キーに言葉を
かける

 


「大丈夫だよ、キー」

 

「...うん」

 

「ちゃんと、弁当食えよ
そんで、帰って来い」

 

「...うん」

 

しばらく二人は無言で携帯越しに
辛い時間を共有した


「ヒョン...俺、先生に言いに行くから」


「うん 待ってるからな」


「ん、それじゃ」

 

電話は切れ
オニュは静かな台所に一人いた   


キーにとり、初めての大きな挫折だった

 

いつまで経っても
そばにいて守ってやりたくなる衝動に
駆られる

辛い経験なく、家族がそれぞれの道を
進めたらどんなにいいだろう

いつまでも、小さい時のまま
守ってあげられたら...

だが、それは出来ない事なのだ

 

よし!とオニュは冷蔵庫を覗き
キーの好きそうなオカズを作れるか
考えてみた

 


夜には家族が集まるだろう

食卓を美味しい御飯でいっぱいにしよう

みんなの笑い声が家に響くように