しゃいに兄弟の砂時計 59
十一月~紅葉
毎年恒例のコタツが居座る
リビングにミノとテミンとオニュが
座っていた
「ああああ、コタツ君最高だなあ」
テミンがゴロゴロとしながら
寛いでいた
「だよなあ、このコタツ
もう、捨てれねえよな
なんかもう、家族の歴史じゃん」
ミノが天板についている
様々な傷を見ながら言った
「ねえ?オニュヒョン」
ミノがオニュを見ると
真面目な顔を俯けていたオニュが
目線だけチラリとあげ
微かに笑った
「!!!」
コタツから長い足をザザっと
抜き出しミノが叫んだ
「ヒョン!屁ぇこいたな!!」
まったりしていたテミンが
逃げ遅れアワアワとコタツ布団から
抜け出そうともがく拍子に
コタツの中から流れ出た
オニュ爆弾をまともに吸い込んでしまった
クセェ~と悶絶するテミンを
オニュはコタツの天板に顎を乗せ
んふふと笑い見つめていた
「もうー!
ヒョン!中ですんなよ!」
「ミアネヨ~
気が付かれないかなあって思って~」
「全く…あの顔!
すぐわかったぜ
冷てっっ」
テミンが暴れた拍子にお茶が溢れ
下まで染みていた
「あ~あ
まあ、上掛けだけ取り替えればいっかあ
テミン!
天板持ってて
ヒョンは新しい上掛け持って来てよ
俺拭くからさ」
ミノは拭ける範囲をタオルで押さえ
「テミナ~すぐ終わるからさ!
ちょいと待っててよ」
コロコロコロコロ、と音がして
目を向けるとリップクリームが
天板の上を転がっていた
「テミナ!コロコロさせんなや!」
「だってえ~」
水平に持とうとしても
リップクリームはあちらへコロコロ
こちらへコロコロと軽やかな音を立て
転がり
ミノとテミン、戻ってきたオニュは
ツボに入り笑いが止まらなくなった
「テミナ!コロコロコロコロ
うるせえぞ!」
「早くしてよ~」
ようやく元の位置に天板を置き
「全くヒョンの屁から大掃除に
なっちゃったよ
ああ、疲れた」
「ミアネヨ~」
「トランプでもする?」
「や~、やんないっしょ
あれは、大晦日のお楽しみじゃん」
「じゃあ、何する?」
「じゃあさ、俺とテミンの目、
どっちが大きくなるかオニュヒョンに
見てもらおうぜ」
「は?何その勝負」
「いいじゃん、ねえ、ヒョン見て
どう?」
全力で目を見開くミノを見て
オニュは口元をひくつかせ
う~ん、と首を捻った
「テミナ!ちゃんとやれよ!」
はいはい、とやり始めたテミンも
自分の限界を知りたくなったらしく
かなり本気で目を見開いてきた
その二人の顔がおかしくて
オニュは片手で口元を隠した
「ヒョン!早く見てよ!
目が痛くなってきた!」
「よし!ミノヒョンに勝つ時が来た!
オニュヒョン、どう?」
真剣に目を見開く二人が
どうにもおかしくて
オニュは我慢出来ず
笑い出した
「もう!!
今、俺全力だったのに!
ちゃんと見てよ!」
ハアハアと横腹を押さえ
「ハハハハハ!!」
とよく通る声でオニュは笑い崩れた
「も、もう、やめてっ
苦しっハアハアっ」
涙を流し笑い続けるオニュに
テミンが乗っかり
ミノが乗っかり
「おっ重い!」
「ただいまあ~
何騒いでんの~
外まで聞こえてるよ」
ジョンヒョンが帰ってきた
「何だよ~何笑ってんだよ~
俺も入れろ!」
スーツ姿のまま
ジョンヒョンがミノの背中に飛びつき
「ヒョン、歩け~」
と下を覗き込んだ
ミノ、テミンも歩いて!歩け!と
揺さぶりをかけ
オニュはグググっと両手を上げ
兄弟を持ち上げた
ヒョンすげえ!
ヒョン最強!
ヒョン全盛期!
と兄弟の喚く声が外まで響いていた
自由に自分に帰れる我が家で
今日もしゃいに兄弟は
一日の終わりを迎えようとしていた