eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟の砂時計 69

 

 

 

 

 

 

 


十二月〜冬の虹

 

 

 

 

 

駅前のコーヒーショップから
十二月の冬景色を
ジョンヒョンが
ぼんやりと 眺めていた


同年代と見られる多くの男は
いかにも忙しそうに雪の中を歩いている

 

 

『お前、今何やってんの?
え?そろばん塾?
え、それだけ?』

 

 

同窓会で会った
かつてのクラスメイトの
言葉が胸に刺さり
思い出しただけで
今、面前で言われたかのように 
ジョンヒョンの心はえぐられた

 

彼らの多くは会社にも慣れ
大なり小なりの
責任を伴う仕事を任される位置まで
進んでいるようだった


人は人
分かっているはずなのに

 

自ら望んだ道にも関わらず
かつてあった自分に対する自信は
喪失し夢も希望も 
くだらなく到底叶いそうに無いものに
思えた

 


コーヒーカップのふちを
スプーンで叩く

 

そっと
何度も

 


カンカンカンと小さな音が耳に響いた

 

 

ジョンヒョンはぼんやりと
その行為を繰り返したが
隣のテーブルで読書をしている
中年男性の射抜くような視線に
気が付き、そっとスプーンを
受け皿に戻した

 

 

何より情けないのは自分の心


どうして、こんなにすぐ折れ曲がるんだろう


どうして、自信が持てないんだろう


自分の道に自信があれば
何を言われても揺らぐ事は無いはずじゃないのか...

 

 


カタンと席を立ち
店を出た

 

 

灰色の天空から、はらはらと
白い雪びらが降り落ちてくる

柔らかく、たおやかに舞い降りる
雪びらは
ひらひら ひらひらと
聞こえるはずもない音を奏でているようだ

 

小さな雪は街の騒音を
飲み込みながら世界を覆い
しんしんと降り積もる

 


自分が
はっはっと短く吐き出す吐息 

足を進める度にぎゅっぎゅっと鳴る音


それらの音を感じながら
白い頬に雪を受け進む

 

我が家へ向かう坂道の登り口に 
スコップを手に人が集まっているのが
見えた

 

暮れかかる灯りの中近づくと
家族であった

 

 

「おっかえりー!!」

 

自分のテンションと真逆な陽気さで
家族は声をかけてきた

 


「...何やってんの?」

 

「見ろ!雪だるまだ!!」

 


「......おお」

 

それは、思わず「おお」と
感嘆してしまう大きな雪だるまだった

 


「雪かきしてたんだけどさ
ついでに作ってみた」


肩にも頭にも雪を積もらせ 
鼻と頬を赤く染め
明るく笑う家族にジョンヒョンも
自然と笑顔になっていた

 

 

「すげえじゃん  かっこいい」


「だろー?さっ、帰ろうぜ!
冷えちゃったよ」


「テミン、風呂入れといただろうな」


「まっかせなさい!入れといたよ」


「よし!出来る子テミンだ!」


つるつる滑る坂道を
みんなで並んで登り始めた

 


「うーえをむーいて
あーるこおぉお」


「...は?」

 

オニュがタオルをほっかむりにして
にこにこと笑いながら
歌い出した


「なみだがあ!
こーぼれーないよぅおぅおーに!」


ミノがジョンヒョンの右手を握り
歌う


「思い出っす!」


「なーつの日!」

 

「春じゃね?」

 

「ひとーりぼっちのよっるー」

 


「ねえ、それ、どっちかっつうと
冬の歌じゃなくね?」

 

息が切れ膝に手をつくオニュを
テミンが背中を押して歩かせる


オニュはジョンヒョンの左手を取り
その疑問には答えず
ぶんぶんと振った

 

 

「しあわせはっ」

 

「空のうーえに!」

 

「しあわせは!」

 

「雲のうーえに!」

 

「逆じゃね?」

 

「うーえをむぅういてっ
あーるこぅうぉうぉ」

 


「涙がこっぼっれっ
なーいよっおっおーに!」

 

 

 

どんなに大きな声で歌っても
空から舞落ちる雪がそれを
吸収し地面に優しく
重ねていくようであった

 

 


ジョンヒョンは顔を上げ
前を見て進んだ