しゃいに兄弟の砂時計 44
九月~初秋
体育館は大混雑だった
暗幕が引かれた薄暗い空間に
音響のテスト音が途切れ途切れに
流れる中
生徒や保護者、見学者のざわめきが
重なり興奮に満ちていた
「席、取っておいてもらって
良かったな」
「うん、座れなかったよ
これじゃ」
最前列の中央付近に
しゃいに兄弟の家族席
カイの家族席がキープされており
顔を合わせた両家は
ここでもお世話になっております、と
挨拶を交わしていた
「じょんしょん先輩」
肩を叩かれ振り向くと
めろんちゃんとお母さんが
にこにこと笑っていた
「おおー!めろんちゃん!」
「じょんしょん先輩!」
「友達?」
ミノとオニュも振り向いた
「塾の生徒さん
めろんちゃんはそろばんの方に
通ってるんだ
ねーー♡」
ジョンヒョンが笑いかけると
めろんちゃんも
んふ~と笑い返した
「やめちゃうってほんと?
じょんしょん先輩」
「これ、めろん」
めろんちゃんのお母さんが
止めた
「やめる?」
「みんな、いってる
じょんしょん先輩がやめるって」
「先生、突然失礼しました
めろん、その話は今はやめようね」
「…いえ」
その時始まりのブザーが
鳴り響き照明が落とされ一層
暗くなった
「めろんちゃん、また、教室でね?」
小声で囁き前を向いた
オニュとミノの視線を感じながら
ジョンヒョンは
テミンが現れるであろう
舞台を見つめた