eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟の砂時計 51

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九月~秋雲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ジョンヒョンは銀杏並木の間に
ポツリポツリと設置されている
ベンチに座っていた

 

 

 


空気はひんやりと爽やかで
薄い青空が黄色く染まった並木の
遥か彼方に広がっていた

 

 


ヒラヒラと舞い落ちるイチョウの葉を
見ながら仕事場での事に思考が飛んだ

 

 

 

 


塾の方針に馴染めなかったジョンヒョンは
教室に立つ事をやめていた


あのまま、やっていた方が
良かったのだろうか

 

 

 

 


子供たちの顔が浮かぶ

 

 

 


今はジョンヒョンは
そろばん塾の方だけを
担当していた


小説を書く、という二足の草鞋を履く
ジョンヒョンには
程良い仕事量ではあったが
自分がこの先どうなるのかを
真剣に考え出すと
言いようのない
不安に囚われ
何もかも間違った道を
進んでいるのではないかという
恐怖感も感じてしまうのだった

 

 

 

 

 


「お待たせ、ジョンヒョン君」

 

 

 


担当のマツ子さんが
黒いコートを羽織り大きな鞄を
下げてジョンヒョンの座るベンチに
やって来た

 

 

 

 


「何、考えてたの?」

 


「…未来と過去が選べる人生があったら、って考えてました
愛する家族がいる未来
一人で成功する未来
どんな人生だったら、、、
人は幸せなのかなって」

 


秋の陽射しがジョンヒョンに
柔らかく降り注ぎ
その瞳を透明に輝かせていた

 


「すみません
こういう話は、もう、何度も
書かれていますよね」

 


「そうね」

 

 

 

 


マツ子さんは足元に広がる
イチョウの葉を一枚拾い上げた

 

 

 

 

 


「だけど、あなたの言葉で書かれた
物はないわよ」

 

 

 

 

 

 


イチョウの葉をジョンヒョンに
渡し

 

 

 


イチョウの葉も一面に広がっている
けど、あなたが持つその葉は
この世でただ一枚の葉よ」

 

 

 


ジョンヒョンは葉をじっと見つめ
マツ子さんに笑いかけた

 

 

 

 

 

 


「あ、ヒコーキ雲」

 

 

 

 

 

 


天高く白い尾を伸ばし続ける
一筋のヒコーキ雲を
二人は追い続けた