しゃいに兄弟の砂時計 40

八月～向日葵

青い空にくっきりとした
白い雲が浮かんでいた

取り込まれた洗濯物の山が
縁側に積まれており
その横で体を投げ出し寝ている
ジョンヒョンがいた

正午に鳴る学校のチャイムが
空越しに小さく聞こえてきた

「12時…目立った動き、なし…」

ブツブツと呟きジョンヒョンは
半分に折った座布団に頭を乗せ
再び目を閉じた

家にはジョンヒョンだけがおり
朝、焚いた蚊取り線香の香りが

漂う庭は
何の心配もなく過ごしていた
幸せな子供時代の夏休みを
思い出させた

ジョンヒョンは空に向かい
指を曲げフレームを作った

くっきりとした白い雲と青空

指をそのまま降ろすと
オニュが日除けに吊るした
簾があり風鈴が静かに風を
待っていた

指を右に動かすと背の高い向日葵が
フレームに入ってきた

キーとミノが蒔いた種が
今、花を咲かせていた

ジョンヒョンは向日葵はあまり
好きではなかった

夏を象徴する生命力を
感じさせる花だったが
心から友達になれる花ではないような
気がしていた

黄色に良からぬ印象を持つ今となっては
尚更、その気持ちは強まった

けれども、陽射しを浴びて
力強く咲いている花は
いかにも夏を象徴しており
やはり、自分は向日葵が好きなのかもしれない、とジョンヒョンは
ぼんやり考えた

目を閉じ意識が落ちる瞬間
電話が鳴り響いた

ジョンヒョンは一足跳びに
電話に飛びついた

静かに受話器を置くと
再び縁側に座り
洗濯物を畳み始めた

タオルを折る

『…最終選考まで残りましたが』

テミンのジャージを畳む

『…今回は見送りに』

オニュのヨレたTシャツを掴む

「なんで、こんなになるまで
着てんだよ

穴、開いてんじゃん」

拳で頬を拭い
ヨレたTシャツを
丁寧に畳む

自分の世界が受け入れられない事は
胸が潰れる程、辛かった

風が吹き渡り
風鈴がチリリン、と揺れる

開け放された窓辺から
風が通り抜け
壁に貼られた兄弟の書初めが
ヒラリと揺れた

『夢』

そうだ
夢ならある

いくらでもある

グイグイと頬を拭い
優しい眼差しで

生まれ育った家から庭を
見回した

そういえば…
担当が付くって、言ってたかも…

ジョンヒョンは
落選のショックで聞き流していた事を
今更ながら思い返していた

縁側で固まるジョンヒョンに
…おい   おい！と声をかけている
オニュがいた

長い竹を抱えて
ジョンヒョンに呼びかけていた