しゃいに兄弟の砂時計 17
四月~桜花
居座っていた冷たい空気が去り
暖かな空気に町は包まれた
小さな出来事で笑ったり
喧嘩したりの毎日が平穏に続き
しゃいに兄弟は揃って春を迎えた
八百屋でのバイトも
板についたテミンは
キーの信用を得てエアロビ講師の
助手も務めるようになっていた
公民館で行われるエアロビ教室は
元々は週一回だった
ところがキーの教えぶりが好評で
児童も教えてもらえないか、と
仕事が舞い込み
今では週二回、キーは公民館に通っていた
成人の部では
運動不足解消や、ストレス解消を
目的としたエアロビックダンスを、
児童の部では
様々なジャンルの曲に
キー自らが振り付けをし
かなり本格的にダンスを教えていた
キーとテミンが公民館で
ストレッチをしていると
ガヤガヤとおば様たちが現れた
「キー先生、テミンちゃん~
今日はあったかいわね~」
「「こんにちは!」」
「さあ、今日も腹肉揺らすわよーー!」
「やだ!ミキさん、肉なんて
ないじゃなあーい⁈」
「あるのよ、あるのよ
飛ぶと揺れるからね!本当!」
きゃははははと盛り上がる
おば様たちの準備が整い
運動前のストレッチに入った
テミンが手本として
センターでストレッチを行い
キーは生徒の間を周り
背中を押したり
足を広げさせたりして回った
「…サチコさん、もうちょい
頑張って」
「あら、キーちゃん、そのズボン
ガラガラで可愛いわね!
シャツもキラキラして素敵だわ」
「ありがとう、サチコさん!
これ、レギンスね
商店街の服のイヌイさんで
買ったんですよ!」
「ええーー!
あそこにそんな洒落た服あるんだ⁈」
「ありますよー!
このシャツとパーカーも
イヌイさんですよ」
「まあ!キーちゃん
掘り出し上手ね~
だけど、キーちゃんが着るから
素敵なのよね、きっと
私が着たら職質もんよ
ところで、最近オニュさんの事聞いた?」
「何ですか?」
「ストーカー紛いの女の子に
付きまとわれてるそうよ」
「…聞いてないですね~」
「そう?タクシー仲間さん達の
間では有名らしいわよ」
「……サチコさん、はい!
ここまで曲げてー!」
ぐっと背中を押され
サチコさんはギャッ!と呻いた