待ち合わせ 3
2人の繋がりは音楽だった
オニュの弾くピアノに引き寄せられたテミンは、オニュには全く無防備なまでに
心を開いた
オニュのピアノに合わせてテミンは
馬鹿げた、おかしな振り付けを即興で
踊り、2人で最後には涙が出る位に笑ってしまいピアノも踊りも出来なくなって
しまうのが常だったが
どんなにコミカルなダンスでも
テミンが踊るとそこに照明が当たっているかのように輝くばかりに見えた
ピアノの才能がある事にも
気が付いたオニュはテミンに
音楽とダンスを習わせるよう
両親に頼んだ
蜜が流れるような幸せな時間は
一年で終わりを迎えた
オニュが20歳の時には家族は破滅に向い
何もかも失っていた
差し出し出せる物は全て差し出したが
まだ、財産を隠し持っているのだろうと
押しかけてくる人間もいた
かつて女中として働いていた
スミさんの好意で
スミさんの親戚である農家の納屋に
2人は住まわせてもらう事になった
土間に簡易な板間を張り巡らせただけの
部屋だったが雨露がしのげる屋根が
頭上にはあった
今の2人にはその空間だけが
安心して過ごせる場所だった