eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

化身 8

 

 

 

 

 


目覚めた時
空は白く
地面も白く
上下の感覚がなくなりまだ奔流に流されているかのような目眩を感じた


目の下に隈を縁どったキーが
ジョンヒョンを覗き込んでおり

 


「...キー」

 

 

呟いた途端、飛びつかれ
雪野原に押し戻された

 


その背中にかつての羽根は無かった

 

 

 

 

 

 

長い長い時間


キーの予言の通り


二人は長い時を過ごしてきた

 

来る日も来る日も陽は射さず
分厚い白い雲から冷ややかな雪が
落ちてきた


分厚く積もった雪は地面を覆い
ジョンヒョンが愛した自然は
完全に姿を消した

 

 


ピルルルと可愛らしい声が聞こえ
ジョンヒョンは空を見上げた

 

一羽の鳥が空を飛んでいる

 

白く痩せた顔に微笑みを浮かべ
ジョンヒョンは手を差し伸べた

 

小鳥はジョンヒョンの手に降り
つぶらな瞳を輝かせ
ジョンヒョンを覗き込む

 

翼を広げ空に飛び立つ鳥を見上げ
ジョンヒョンは微笑んだ

胸の内に小さな灯りがついたような
温もりを感じていた

 

そして一歩一歩
また、足を踏み出す


自分に出来る務め

オニュが自分とキーに託した務め


ジョンヒョンは長い時を
大地に祈りを捧げ歩いた


来る日も、来る日も


それが自分に出来る事なのか
これが何かの役に立つのか
もはやわからない程
長い時...

 


ふと気がつくと雪がやんでいた

 


厚く垂れこめる白灰色の雲に
割れ目が出来ており
その隙間から柔らかく地面に向かい
揺れているものがあった

 


ジョンヒョンは口を薄く開け
その光景に見蕩れた

 


足元から囁く声が耳に届く

 

何も考えず
冷たい雪に膝をつき
両手で雪を掻き分ける


手はかじかみ、指先が赤くなっていくが
ジョンヒョンは雪を掻き分け続けた


やがて
小さく、柔らかな緑の葉が
現れた

 

重たく積もる雪をジョンヒョンが
払い除けると草は身震いして
背伸びをした

 

 

小さな生命が芽生えていた

 

 

 

「...っあ、ああ...ああ!」

 

 

ジョンヒョンの瞳から熱い涙が
溢れ出す

 

 

 


「キー...キー!!!」

 

 

 

 

鼻の頭と頬を赤くし
泣きながら、笑いながら叫んだその声は
大地を揺らす

 

 

 

空の割れ目は数を増し

柔らかな光のカーテンが

幾本も大地に向かい

揺れていた

 

 

 

 

 

 

 

 


end