eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

化身 7

 

 

 

 


キーは通い慣れた道を歩く


降り積もった雪はこの道を行き来する
者により踏み固められ
一筋の道を作っていた

 


雪道は大きな窪みまで続いていた

 

円形の窪地には透明な液体が満ちており
キーは、道があるかのように
揺らめく皮膜の上を
中心へと向かい歩いて行く

 

そこには三人の男が横たわっていた

 

横たわる三人の頭上には
小さく炎を灯す蝋燭がそれぞれ
浮いており
液体の中で
蝋燭はゆらゆらと灯り続けていた

 

キーは跪くと
ローブから長い蝋燭を取り出す


そして、呟きながら
透明な皮膜へ腕を差し入れ
短くなった蝋燭に近づけ
炎を移した

短い蝋燭と交換し
新たな蝋燭を頭上へと置いた


「ミノ...早く起きろ
お前の光が懐かしいよ

雪を溶かしてくれよ...」

 

キーはとろみのある液体に浮かぶ
ミノの頬を少し撫でた

 

「テミン」

 

テミンの蝋燭を取り替え
髪を撫でた

 

「テミン...笑ってくれよ」

 


キーは最後の蝋燭を交換した

 

「ヒョン...
ヒョン、約束、守ってるから」

 

目を閉じたオニュの顔を見つめ
キーは立ち上がる

 


「また、来るからね」

 

希望があるのかもわからない
この胸の詰まるような儀式を
キーは毎日、毎日

長い日々

心を込めて続けてきた

 

 

窪地を歩き
雪の積もる地面に足をかけ
キーは道を歩き出す

 

 

その背中に翼は無かった

 

 

 

 

ジョンヒョンは一面の雪の原を
歩いていた


色素が抜けたような白い肌に
赤い唇から凍った吐息を吐き出し
歩き続ける


空は厚い雲に覆われ
今にも雪片が落ちて来そうであった

 

あの日、大地は一変した

オニュの全てを込めた稲妻は
空を切り裂き
テミンを、そして固くテミンを抱きしめたオニュ自身を貫き地面へと
突き刺さった


電流は羽根を焼き
彼らからその翼をもぎ取った

 

稲妻の光に浮かぶ二人の姿を
ジョンヒョンは今でもはっきり
思い浮かべる事が出来た

禍々しい程に地球を見下ろす
大きな月が浮かんでいた事も

 

あの時、キーは神から授かった
ガラス瓶を取り出した


「ジョンヒョン、離れて!
俺から離れて!羽根を守るんだ!」

 

しかしジョンヒョンは
頑として離れなかった

 

「お前が行かないなら
俺も行かない」

 


キーは説得は不可能と悟ったのか
時間が無いと判断したのか
目元を緩ませ笑いかけた

 


「務めを」

 

 

キーは『無限の力』と神から授かった
発光している液体をまじないを呟きながら
大地へと空へと撒き散らす

 


大地に零れた液体はキーの足元で
ふつふつと波打ち
一気に質量を増してゆく


それは洪水のように奔流し
二人の足元を流れ
ますます高さを増した

空に放たれた金の粒は
白く分厚くその形を変え
天空に留まった


蜜飴のような奔流の中を
キーとジョンヒョンは
手を繋ぎ立っていた


「キー、これは?」

 

発光する液体が腰まで達していた

 

「無限だよ、また、会える
僕らには務めが残っているから」

 

流れは渦となり
ローブに包まれたミノ
固く抱き合うオニュとテミンが
導かれたように
渦に巻かれ流れてゆく


「ジョンヒョナ、目覚めたら
長い長い時間を過ごすだろう

それが僕らの務めなんだ」

 

キーがジョンヒョンの肩に頭を埋め
呟いた

 

逆巻く奔流は胸元まで達し
肉を引きちぎられるような
灼熱の痛みを背中に感じ
ジョンヒョンは叫んだが
自分の声かキーの声か
もはやわからなかった

 

ごうごうと押し迫る液体は
その口からも鼻からも流れ込み
ジョンヒョンは頭の中に火花を散らす


強くしがみつき
決して離そうとしないキーに体を
預けたままジョンヒョンは意識を
失った