eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

化身

 

 

 

 


雨上がりの大地に
光が降り注いでいる

 

どこまでも続くような
遥か彼方の大地の果てでは
空の淵が大地の淵と合わさり
一筋の地平線となって緩く円を描いている


雲の切れ目から柔らかな布のような
光の帯が地上に向かい
幾本も伸びている世界は
美しさそのものであった

 

 

 

 

 

 

 

 


先程まで降っていた雨は
一面に広がり陽射しを反射して
きらきらと大地を光らせていた

 

大地の中央に
二つの岩柱がそびえ立っている

岩柱は林檎を両端を残して
丸かじりしたような
そんな形をしており
どんな生き物も
その頂上に辿り着く事は不可能であろうと
思われる異世界の象徴であった

 

岩場にはこの地を治める神が棲み
羽根を持つ五人の士がそれを護っていた

 

広大な世界では
それぞれの地を護る神がおり、
それぞれの暮らしがそこにはあったが
彼らが過ごしてきた長い時間の中
この大地では
争い事はかつて一度も無かった


大地を治める神と
護る士としての立場は決して超える事は
なかったが
長い時間を共に過ごしてきた中で
父が子を想うような
子が父を想うような
暖かな愛がいつも流れており
その愛こそがこの大地を
護る一因でもあった

 

 

 

 

白に枯葉が混ざったような
亜麻色のローブを身に纏い
岩場の一つに五人の士は
神を囲むように立っていた

 

 


「綺麗だ...」

 


美しい物を愛する士の一人
ジョンヒョンは
世界を慈しみの籠った瞳で
見渡した

 


「光の粒が世界に広がっている...」

 

 


常人には決して見る事の出来ない
世界が五人の瞳には見えていた


降り注ぐ光に温められた水滴は
空へと戻る道程の途中で
空間一面にきらきらと
ダイヤモンドが撒き散らされたような
輝きであった

 

 

 


「ミノ、時間だ 始めなさい」

 


ミノ、と呼ばれた背の高い男が
背中に降ろしていた
フードを頭に被ると
それを合図にしたように
日差しがゆっくり、ゆっくりと
傾きだす


眉に亀裂のある男は
無数の光の粒を呼び寄せ
ガラス瓶に流し込んでゆく


男の吐息が瓶に流し込まれると
光の粒はとろりと形を変え
淡く金色の液体となっていた

男は瓶を神に捧げ一礼した

神の吐息が瓶に流し込まれる


金色の液体は静かに泡立ち
発光した


「さあ、キー受け取りなさい
無限のものを上手に使うように」


キーは頭を下げたまま瓶を受け取り
唇の両端をくるりと上に向け
嬉しそうに笑った

 


「さあ、オニュ」

 


オニュ、と呼ばれた男が神に一礼し
空を見上げた

男の白い喉元には
くっきりとした隆起が象られている

 

「ヒョン」

 

無邪気な微笑みを浮かべた男が
呼びかける

 

「オニュヒョン、時間?」

 

ヒョン、と呼ばれた男は
隣の少年を見た


細くなびく青草のようにしなやかな
この少年はまだ覚醒しておらず
どんな力を持つのか未知であった


愛の中で過ごしてきた
彼の笑顔は美しく 白い頬は滑らかで
彼が笑うと優しく丸く頬が膨らんだ

 

 

 

オニュの瞳は静かで
意思の強さを感じさせる
切れ長の目だったが
少年の穏やかな微笑みに応え
ゆっくりと微笑みを顔に浮かべると
その顔立ちは一変した

愛がこの瞬間にも溢れ出る

 

「そうだな、行こう」

 

五人の背中から畳まれていた大きな翼が
伸び出してきた


純白の羽根は岩場に吹き付ける風を受け
ハタハタと揺れる


男は自分よりも小さな手を取ると
「テミン、お前から」
と、微笑みかけた


若く瑞々しい翼が力強く広がり
テミンは岩場から身を投じる


大地から聳え立つ
大樹の先に触れんばかりに一気に下降し
白い翼を一打ちし
高く高く舞い上がり風を巻き起こす

 

その姿を目で追って残りの男達も
羽を広げ始めた


フードを被るミノはまっしぐらに
テミンの側まで飛翔し
二人は絡まり合いながら
遠くまで飛んでいく

 

「ジョンヒョン」

 

艶やかな瞳の男が頷き
真っ白な羽を広げ風を捉えて
空へと羽ばたいた

 


ジョンヒョンは煌めく光の中を飛んだ

高速で流れる光の中は
やがて金色の川のようになり
ジョンヒョンは幸福が身体中に湧き上がるのを感じた

柔らかな草や色とりどりの花

吹き渡る清涼な風

鳥の鳴き声、木々の呼びかけ

群れをなし大地を走る獣

 

ジョンヒョンは流れる景色の中
我知らず歌っていた

心のまま、歌い笑っていた

 

ジョンヒョンが愛するものたちは
その眼差しを平等に受け
薄青から群青へとゆっくりと
移り変わる空の下
生きる力のエネルギーを注ぎ込まれ
喜びに輝いた

 

 

キーはガラス瓶を仕舞うと
空へ羽ばたき
世界に綻びはないか高く低く
巡回し
鋭い目で漏らさずに愛する世界を
見回した

 


仲間の飛翔を確認して
オニュは翼を広げる


大きな翼だった


翼は一打ちで彼を先まで運ぶ


見下ろす大地は光と平和に満ち
羽ばたく仲間もいつもの通りで
異常は無かった


地表を暖かに照らす太陽と
夜の輝きを前に灰色の姿を晒す月が
同時に浮かんでいるのが見えた

 


空の様子に気を取られていたオニュの
すぐ近くを
若く、いたずらっ子なテミンが
高速で飛び
羽根の先がオニュの頬を掠めた


真っ白な羽根の中に
一枚の黒羽を見た気がして
オニュの目はテミンの姿を追った

 

しかし、突き刺すほど
輝く光の中で
テミンの羽根は純白であり
美しく空を舞っていた


再び現れたミノがテミンを連れ
遥か彼方まで飛んでゆく

 

 

間もなく訪れる満月を前に
月は白く膨張していた