eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

化身 2

 

 

 

 

全身が緑に染まるような
森の中をジョンヒョンは歩いていた


朝露が至る所で輝き
あちらこちらで張られている透明な
蜘蛛の糸にも小さな水の粒が光り
首飾りの連なりのようであった


柔らかな草や丈高い樹々は
ジョンヒョンが通ると優しく体を震わせ
清涼な空気を放出した

 

 

ジョンヒョンはこの先に
テミンがいる事を感じていた

張り出した大枝を潜り
顔を上げるとそこに予想通りの
姿があった

フードを頭から
すっぽりと被るテミンの背中である

 

 

ジョンヒョンはその景色に
違和感を感じたが
何が自分の心を乱すのか
はっきり捉える事が出来ず
目を凝らした

 

テミンは張り巡らされた蜘蛛の巣の
下に立っており
森を通る透き通った光が
その一面にはまるで届いておらず
薄暗く澱んで見えた

不吉な気配に胸を締め付けられた
ジョンヒョンは先に進むことも
声をかける事も出来なかった

 

テミンの亜麻色のローブと
畳まれた羽根に
生い茂る葉の隙間からちらちらと
細い光が落ち影を浮き立たせる


折り畳まれた純白の羽根に
黒羽を見た気がしたジョンヒョンは
声を上げたかったが
呪縛にかかったように
体を動かせない

 


テミンはゆっくりと動きだした


亜麻色のローブから
色白な若い彼の腕が現れ
手のひらを上へと伸ばして
光り輝く水滴を付ける蜘蛛の巣に
近づけた

そこには細長い足を強ばらせ
重たげな体を支える
この網を張り巡らせた主がいた

 

 

逃げろ!

 


ジョンヒョンは叫びたかった

しかし、声が出せなかった

蜘蛛とジョンヒョンは呪文をかけられたように身動きが取れず
ただテミンの動きを目で追った

 

テミンは、躊躇わず
蜘蛛を捕らえた

 

 


膨らんだ胴体を支える
黄色と黒の細長い足がもがくのが見えた

 

手の中の蜘蛛は
ゆっくりと、 握り潰されてゆく

 

 


蜘蛛の断末魔がジョンヒョンの耳を打ち
彼の呪縛は解かれ前に飛び出した

 


テミンの手首を掴み
拳を開かせると
体液を流し絶命した蜘蛛がポトリと
落下した

 

 

テミンは蜘蛛からゆっくりと
目線を上げジョンヒョンの顔を見た


その顔を見たジョンヒョンは
目を見開いた


病的なまでに青白い顔の
目の下には隈が色濃く出ており
痩せた頬に
妖艶な笑みを浮かべたテミンは
別人のようであり
何よりもジョンヒョンの心を痛めたのは
テミンの顔に愉悦が浮かんでいた事であった

 

テミンはジョンヒョンを見つめたまま
掴まれた手を自分の口元に
引き寄せた


手のひらに付着した緑の体液を
薄く柔らかそうなピンク色の舌を出し
舌に掬いとる

 

細い首を上下に動かし
テミンは体液を飲み込んだ

薄く目を開け陶然としたその顔は
邪鬼のようで呆然とジョンヒョンは
テミンを見つめていた

 

テミンはジョンヒョンの手を振り払うと
ローブを翻し森の中へと歩いて行った

 

悪い夢を見ているようだった

今のは本当にテミンだったのだろうか


足元には潰された蜘蛛が
無惨な姿で落ちており
夢では無かった事を示していた


そっと両手で蜘蛛をすくい上げ
この地に埋めようと蜘蛛の巣の下を見たジョンヒョンは飛び下がった

 


「...そんな」

 

 

光の届かない暗がりに咲く花があった


赤よりも黒く
黒よりも赤い
黒百合だった

 


死と破壊の前兆


黒百合が咲いていた