eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

表裏

 

 

 

 

 

 

 

広い部屋の中には
オニュの友達家族や親戚、
仕事仲間の友達で10人以上集まっており
あちらこちらで
会話が飛び交い、賑やかに盛り上がっていた

 


振舞われたたくさんの食事と共に
お酒も進み次第にみんなの声も
大きくなり、ドッと割れるような
笑い声があちらこちらで弾けていた

 


オニュと付き合い一年程経った
ユナはみんなの話を聞きながら
ニコニコと笑っていた

 


「やー、それにしてもユナさん、
可愛いよなーー!
オニュと付き合って楽しい?


オニュって普段はどんな?
俺もよく、わかんない時あるんだよねえ」

 


酔って赤ら顔になった
オニュの仕事先の仲間に問われ
ユナはちらりとオニュを見た

 


オニュは、部屋の反対側にいる
親戚と車座になり話しており
笑っていた


「オニュさんですか?
優しいですよ」


「ふーん、優しいってどんな?」

 


「そうですね…」


ユナが考えていると
突然肩を抱かれグラグラと揺らされた


「ユナさん、可愛いーなー!
困ってるーー!


言えないよねーー!
どんな時に優しいか、なんて!


言えないよねーー!!」


突然盛り上がり始めた男に揺らされて
ユナは困惑し、オニュを見やると
一瞬、目があった


オニュは優しく笑っていたが
ハッとユナは体を
強張らせた


オニュの目が自分を責めているように
見えたのだ

 

 


「お前、離せよ
馴れ馴れしいな


ユナさん、すいませんね
こいつ、飲み過ぎたみたい


お水、いただけますか?」

 


そばにいた友人がユナが
離れるきっかけを
作ってくれ


聞かせてよー!と、取りすがる男を
なんとか引き離しキッチンへ向かった


冷蔵庫を覗きこみ
ミネラルウォーターを取り出し
振り返るとオニュが立っていた

 


「疲れてない?」

 


「…ちょっと」

 

 


「…楽しい?」

 

 

 


ユナは少し考え
「はい」


と、答えた

 


大勢の中にいるオニュを見るのは
新鮮で、
色々な話が聞けてユナは
気疲れを感じながらも楽しんでいた


いつも、横にいなくても
同じ部屋の空間で
度々、オニュの視線を感じ
目があうたびに微笑み合っていた

 

 


「そっか
もうちょっとだからね」

 

 


そう言いながら
近づき触れるだけのキスを
ゆっくりと落としユナが握りしめていた
ミネラルウォーターを
スッと取り上げ先に戻って行った

 


壁一枚隔てただけの
賑やかな声が聞こえる
空間でオニュにキスをされ
ユナは驚き冷蔵庫にもたれかかった

 

 

 

 


やがて、帰り始める人がちらほらと
現れ段々と人数が減っていき
どうにも、動けなくなった数人が
泊まっていく事になった


ソファや床で寝てしまった友人に
オニュが布団をかけて回り
ユナはテキパキと動く
オニュの親戚と
空き瓶や食器を適当に片付け
笑顔で別れの挨拶をし
帰ろうと身支度を始めた

 

 

 

 


「…どこ、行くの」

 

 

 

 


コートを手に取ったユナに
不機嫌にオニュが問い質してきた

 

 

 

 

 


「帰ります」

 

 

 

 


目を微かに細め愛想の一切ない顔で
ユナの手首を掴むと
力づくでオニュの寝室へ
連れ込んだ

 

 


後手でドアを閉めたオニュは
ユナをベッドに突き倒した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス〜二人のデート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明るい陽射しの中でナツはジンギを待っていた


ジンギと一緒に歩く事を考えて
胸がドキドキしていた
何を話せばいいだろう
楽しくしてあげられなかったらどうしよう

 


ナツは考え出すと
不安で胸が苦しくなってきた
その時通りの向こうにジンギが見えた

 


ナツは周りの景色も見えなくなりジンギだけを見つめていた


いつもの黒いスーツは着ていなかった

 


肘まで捲り上げられた青いシャツ
ジーンズにスニーカーを履き
髪の毛も洗いざらしな感じで
あちらこちら跳ねていた


「…お待たせ ナツ」
ジンギは恥ずかしそうに
ナツを見て微笑んだ

 

「…はい」ナツは全ての不安を忘れ
ジンギと歩き出した


どこに行くというあてもなく
ただ2人は住宅街を歩いた


時々、顔を見合わせ笑いあった

 

 


空気は花の香りで満たされ
陽射しがたっぷりと降り注いでいた

 

 

 


緑の生垣の下に
オレンジ色の池が広がる道端で
ジンギが立ち止まった

 


「…ナツ」

 

 

 


ナツの右手を取り手のひらを上に向かせた

 

 

 

「ナツにプレゼント」

 

 

 

優しい優しい笑顔で見下ろす
ジンギの顔から、手のひらに視線をむけ
ナツは涙が溢れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ナツの手のひらには

オレンジ色の可愛い金木犀の花が載っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 15 背負う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オニュヒョン先生は僕を守ろうとしたよ


あの人はヒョンを見捨ててしまったと
自分の弱さを
ずっと後悔していたんだ


最後に自分の命をかけて
償いをしようとしてくれた

 


あいつを殺したのは自分だって
あの時、本当はまだ生きていて
自分がとどめを刺したんだって言ってた

 

 


それに…


それに、叫んでいた
誰が殺したのかは、わからない
なぜならって


でも、その先は聞けなかったし
真実を聞く前に殺されてしまった」

 

 


「俺にはわかる気がする
あの時、同時に飛び出してきたんだ
ジョンヒョン ミノ お前と


だから、誰がそうしたのか
あの時の状況ではわからなかった


先生はそれを言おうとしたんじゃないかな」

 


2人は救急車を待つ間
壁にもたれて話していた

 


「オニュヒョン
もしかして僕の事務所に浸入した事ある?」


すると、オニュは
眉を下げて
申し訳なさそうな顔をした


「…キー、ごめん
一度だけある。
どうしても、みんなの手かがりが欲しかったんだ


あいつがみんなを追い始めていた」


「ヒョン、早く会いに来てくれたら
よかったのに」


「俺は…俺は事件に繋がる人間だ
顔を晒してみんなを巻き込むよりも
未然に防げるならそうしようと思っていた」

 

 


「今日、事務所をめちゃくちゃにしたのは?」


「…あいつだ
あいつはキーの事務所まで辿り着いたんだ


物色してる所を俺が見た
だいぶ暴れたからめちゃくちゃになってしまったよな


すまなかった…」


「それから、ここまで来たの?」


「あいつを追ってきたら
ここだった
お前がいて驚いたよ」


「ヒョンは、、、
ずっと僕たちを見ていたの?」


「…そうだ
遠くから、見ていたよ」

 

 


「ヒョン、真実は…
真実は何だと思う?」

 

 

 

 

 

 

 


オニュは遠くに見えて来た
救急車の赤く光る回転灯を見ながら
考えていたが、やがて、ゆっくりと
言った


「キー、先生の最後の言葉こそが真実だ
俺はあの時、先生のそばにいたから
わかるんだ


先生は自分の命をかけて償いをし
 真実の告白をした


お前達は、誰一人として人を殺していない。


正々堂々と生きて行くんだ」

 


そう話すオニュを見ていたキーは
オニュが先生との秘密を
今では自分一人で背負っていた事には気がつかなかった

 

 

 

 


「オニュヒョン…
女の子は、ナツさんなの?」


「……」


「彼女、とっても心配してた
もしかして…彼女の事も見守ってる内に
ヒョンは…
ヒョンは彼女の事?」


オニュは何も答えなかったが
色白な顔が、真っ赤に染まっており
キーは、ふふふと笑っていた


「救急車が来るよ!!
あれ?顔が真っ赤じゃん!
大変だ!早く、早く救急車!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


テミンが慌てて救急隊員に駆け寄って行き
二人は顔を見合わせて笑った

 

 

 


すぐにみんなで集まれるだろう
ジンギがオニュヒョンだとわかったら
ジョンヒョンとミノは
どんな顔をするだろうか

 


未来にはまだ問題が山積みだ
だけど、自分の力で解決してみせる

 

 


僕達は家族だ
何年会っていなくても
家族だ


オニュの体に触れたキーは
理屈を超えて感じていた

 


不思議な縁で再び引寄せあった僕達は
会わずにはいられない宿命なんだろう

 


キーはオニュを支えながら
救急車に向かい
テミンはじれったそうに
地団駄を踏みながら
キーとオニュを手をこまねいて
早く早くと呼んでいた

 

 

 


もう、二度と

 

 

 

 

 

 

 

 


決して離れ離れになるつもりは
なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 14 再会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーは逃げ場を失い
車に残してきたテミンを思った


何か方法はないかと
頭脳が高速回転したが
どう考えても逃げる場所はなかった


その時窓を突き破り
石が転がりこんできた


ガシャンという音に男が窓に振り向いた


キーはその一瞬を逃さず
机に飛び乗り
ナイフ男の背中に飛びかかった


腕を押さえ込み武器を奪おうとしたが
男は強靭だった


キーは背中から振り落とされ
腰を強打し一瞬目が眩んだ

 

 


キーに近寄るナイフ男の前に
見知らぬ男が滑り出て来た


床に伏せ近づいてきていた男は
左膝を軸にして滑り込み
右足で相手の足を薙ぎ払った


ナイフ男は、倒れながらも
凶器を鋭く振り回した


突然、現れた第二の男の腕がパックリと斬られていた

 

 


キーが動こうとすると

 

 


「動くな!
俺がやる!お前は手を出すな」


そう言ってスーツの裾を翻して
立ちはだかった

 


男は黒いスーツを着ていた

 

 


ジンギだ

 

 


ジンギだと、キーは思った

 

 


見上げた先には、
前方のナイフ男に神経を集中させ
全身の筋肉を闘いに備え
汗で顔を光らせているジンギの白い
横顔が見えた

 

 

 


ナイフ男は汗とよだれで顔を光らせ
にじり寄って来た

 

 


「お告げだ殺せと命令が出ている」

 

 

 

 


丸腰のジンギは男を見据え
まるで前方にナイフを持った男など
いないかのように
スイッと近寄った

 


男がナイフを振り上げながら
飛びかかり
ジンギは飛び退りながら
ふわりと動き

右足で男の脇腹に蹴りを入れた


男が前のめりになった所で
ジンギは両手を握りしめ男の頭上に
勢いよく振り落とした


倒れこんだ男の手首をグシャッと音が聞こえる程踏みつけナイフを取り上げた


男は静かになった
ハアハアと荒い息をするジンギの息遣いが部屋を満たした


「…血が
…血が出てる!」

 


ジンギの腕から流れる血を止めるため
持っていたハンカチで
上腕をきつく縛った

 


「…それじゃ…
それじゃ、あなたがオニュなんだね?
オニュ…ヒョンなんだね?」

 


険しかったジンギの顔がゆっくりと
ほころんでいった

 


「覚えてる…
その、笑顔なら覚えてる…」


キーはいつしか泣いていた
自分でも止められなかった


「…泣き虫」


オニュはキーの頬に手をあて
優しい眼差しで見つめた


その時、「キーヒョン、まだあああ?」
「って、部屋めちゃくちゃじゃん
何があったの?」


「テミン!」


一瞬、2人ともテミンに目を向けた


気を失っていたはずの男が
意識を取り戻し
そばに倒れていた施設長の胸から
ナイフを抜き取りキーに突き立てようとしていた


それに気がついたオニュがキーを抱き込み覆い尽くし
オニュの右肩に激しい振動と共に
ナイフが振り下ろされて行く様子が
キーにはスローモーションのように
見えていた


「オニュヒョン!!
やめろおおおお!!」


キーは男に頭突きを食らわせた


テミンが駆け寄りふらついている
男の急所を蹴り上げ
痛みに呻き蹲る男を2人がかりで押さえ込み机に縛り付けた

 


「オニュヒョン!オニュヒョン!」


「キー、やったな
お見事だ
テミンもすごかったな」


「えっ⁉︎…誰?」


「テミン、オニュヒョンだ
ああああ!後で説明する!


ヒョン、病院!救急車!」


「…大丈夫だ 問題ない」


「あんた、ナイフが刺さってる!
肩に刺さってる!
大丈夫じゃないよ!」


「テミン!オニュヒョンは
命の恩人だぞ!


救急車を呼んでくれ!
それから警察も」


「はい!」

 

 

 

 

 


「テミンは大きくなったな」


「みんなだよ、ヒョン
みんな大きくなったんだよ」


「…また、泣いてる
俺の周りは泣き虫が多いな」


優しく頬を拭われながら
オニュも泣いている事は
言わないでおこうとキーは思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 13 真実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーは一度にもたらされた真実に
ついて行けず無意識に立ち上がった

 

 

 


自分が殺していた?
俺は、何も知らずにいたのか

 


それに…
追われている…


事務所に浸入の形跡があった事を思い出していた
ジンギが浸入したのではと思っていたが
違うのか?

 


あまりにも重い真実を背負う予感に
何から考えて良いか分からず
キーはパニックの波がジワジワと自分を
包囲していくのが、わかった
酸素が足りない気がしていた

 

 


「あなた方を追っている人間は
精神を病んでいます


あの方も暴力的な面が顕著に表れている方でした
あの一族にはそういう血が流れているのだと思います」


「…先生はその人に会われた事はあるのですか?」

 


「あります
何度もここへ来ています


もはや、何を言っても
信じてはもらえないでしょう


逃げなさい
どこか遠いところへ身を隠すのです」


「でも…もしも本当に殺したのが
僕だったら!」


「いいえ!それは、誰にもわからない!
なぜなら」


その時、ヒュンッという音が
キーの横を通り抜け
施設長の胸にナイフが突き刺さっていた


キーは、咄嗟に机の後ろに回り込み床に伏せた

 


窓から男が足をかけ
体を乗り出し室内に入り込んできていた


床に仰向けに倒れている施設長を見下ろし


「最後だ
真実を話せ」


「真実は話しました
あの方はだれも知らない内に姿を消したと」


男は施設長の胸に突き刺さるナイフを
足で踏みつけ体にねじ込んだ


施設長のたまぎるような悲鳴があがった


「やめろ!!
話す!話してやるから先生から
離れろ!」


キーが叫んだ

 


「あいつは、俺が」


「違う!!!
あなた方は誰も殺してはいない!


なぜなら…
なぜなら


あの時あの方は、まだ生きていた!


私はそれに気がついていたのです
私は、どこまでも卑怯な悪の塊です
キー、本当にごめんなさい


あなた方は何の罪も犯していない!」

 


「私が殺した!
私が最後のトドメをさしたのです!」


施設長は
男を見据え そう叫んだ


男は無言で
施設長の胸にナイフをトスンと打ち込んだ


「先生!!」


しかし、オニュの頭上を掠めてナイフが飛んできた


「お前も同罪だ
殺せと命令が出ている…」


「命令?
誰から?どういう事だ?」

 


「神が告げている制裁せよ」


男は呟くとキーの机に近づいて来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 12 連鎖の炎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーは封印していた記憶が
流れ出てくるのを感じた


あの頃の閉塞感、自分では何も出来ず
誰かに縋らなければ生きていけない心細さ
雑多な食事の匂い
ざわめく周囲…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ジンギがオニュだった
オニュはジンギだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


施設長の告白は続いていた

 

 

 

 

 

 

 


あの方が倒れたのを見ていたのは
私とあなた、ジョンヒョン、ミノ
オニュ
テミンは気絶していましたから
何も見ていないでしょう


そして、もう1人小さな女の子がいました

 

 


私は警察に届ける事は出来なかった


私は一度オニュを見捨てました
そのオニュや辛い目にあってきた子供たちを再び見捨てる事は
出来なかった


神に背いても自分の気持ちを選びました

 


私は子供たちに
この方は気を失って倒れているだけだから
お部屋へ帰りなさいと
部屋から出しました
テミンはオニュに背負わせました


あの方を誰にも知られず
始末しなければならなかった


子供たちには
施設長はいなくなったと話せばすみます


色々な方法を考えて
施設の焼却炉で燃やす事を考えましたが
この方に火を放つ事は
私にはどうしても出来そうになかった


それで、焼却炉の後ろに
穴を掘り埋めて置く事にしたのです

 


私が闇に紛れ穴を掘っていると
後ろから足音が聞こえました
あの方が生き返ったのかと
私は驚き振り向きました

 


オニュでした

 


オニュは私が人知れずしようとしている事を悟ると穴を掘るのを止めさせました


あの子は本当に賢い子でした
恐怖で動転している私に
ここに埋めても、すぐに見つかってしまうと言いました

 

 


私は、自分には到底出来ないと思っていた事をやるしかありませんでした


あの方を引きづり焼却炉の口へ
持ち上げ中へ転がり落とした…

 


ドサッと落ちたあの音が
耳から離れません

 

 

 

 


そして火を付けた…
私が火をつけた

 


一晩中、燃やし続けました
オニュはただ、私のそばに座り
じっと前を見ていました

 


私はオニュに謝りました
ごめんなさい、守れなくて、ごめんなさいと

 

 


オニュは私の顔を見て
頷いた…
あの子の顔が暗闇の中で焼却炉の激しく燃え盛る炎に照らされてくっきりと見えました

 

 


あの子は何も言わなかった
ただそばにいてくれました

 


オニュはその後、別の施設へ移されてしまい、私は、焼却炉を稼働させ続けた…

 

 

 


あの子が
辛い人生を歩んでいたとしたら
私の責任です
あの子は私が見捨てた瞬間を
決して忘れないでしょう
きっとあの子の傷になっているはずです
私はそれ以来、後悔を背負い
生き続けています

 

 

 

 

 

 

 

 


「…先生


なぜ今になってその話を聞かせたのですか?」


「…あの方のご遺族は長年
あの方を探していたのです
やがて、あの方は事件に巻き込まれたのではないかと警察に届け出ました


そして、自分の意思で行方をくらませたのではないのなら…
殺されているのなら…


法的に問える殺人の時効15年まで
あと三ヶ月なのです


ご遺族は法的に裁くよりも
自分の手で裁く事に重きを置き始めました

 


あなたは…
いえ、あなた達は追われています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 11 懺悔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…テミン、青池施設を覚えてるか?」

「覚えてるけど、はっきりじゃないな」


「テミンはあの時まだ5歳位だったもんな」


「また、行きたい場所では無いね」


「そうだな…
だけど、これから行くのは
青池施設だ

ジンギが青池施設と絡んでいる
確かめてみたいんだ」


「電話で聞けば?」


「…テミン君~
電話でプライベートな事を
ペラペラしゃべる奴がいるか?
顔を見て話す事が大事なんだ」


「わ!かっ!て!るぅ!
じゃ、行きますよ」


走る車の中から施設に電話をかけ
訪問したい旨を伝えた
電話を切るとテミンに話しかけた

 


「前にお世話になった先生が
今は施設長になって残っている


ところで、さっき何か伝えようと
してたよな、
あれは何だったの?」


「キーヒョン、頑張れ気をつけて!って
言ってたんだよ!わかるでしょ?」


「…そんな事だったの?」

 


キーは横目でテミンを見て
がっくりしていた

 

 

 

 


施設から離れた場所に車を停め
テミンは車で待つよう指示をした

 

 


キーはかつて自分が
暮らしていた施設を眺めた


小さな遊具が何個かある庭
大きな下駄箱が並ぶ狭い玄関
色あせた壁紙

 


何もかもが子供の頃の
記憶を呼び覚ます景色であり
内蔵が縮むような気分の悪さに襲われた

 

 


「先生、お久しぶりです
ご無沙汰してしまい
申し訳ありませんでした」

 

 


「よく、来てくれたわね
さあ、顔を見せて…
立派になって…
あなたの顔に全て現れていますよ


それに、ここがあなたにとって
辛い場所であった事は
私にはわかっています」

 


「先生…僕は」
しかし、その先が言えなかった

 

 


「…いいんです、わかっています
私の方でもあなたに話さなければならない事が起きました


でも、まずはあなたの話から
伺いましょうね
さあ、聞きたいこととは何ですか?」

 


2人は簡素な職員用の椅子に腰掛けた

 


窓ガラスには室内の照明が反射し
灯りに引き寄せられた大きな蛾と
小さな蛾が絡まり合いながら
パタパタとガラスに体をぶつけていた

 

 


「…はい昔、僕と…僕達と一緒に暮らしていた子供たちの事です」
キーは胸の鼓動が早まるのを感じながら言った

 

 


「先生はジンギという名前にお心当たりはありますか?」

 

 


「まあ、キー
キボム 
もちろんですよ
ジンギとはオニュの事でしょう?」

 

 

 


その言葉が脳を貫くのを感じたが
キーは身動きが取れなかった

 

 


「オニュの事に関係があるお話なのかしら


私が話しておきたい事と
共通しているかもしれません
話すべき時が来ました


長くなりますがお話しましょう」

 

 


「オニュがこの施設に来たのは
8歳の頃だったと思います


年齢と体に見合わない
魂の宿る目をした子でした


物静かな内省的な子供でしたが
激しい気性も持ち合わせていて
辛い目にあいました。
私がもっと庇ってあげられていたら…


今でもあの子が苦しんでいたとしたら私のせいです


私はこの施設を守るためという建前で
何も出来ない傍観者でした」

 

 


施設長は話し始めた

 

 

 


ジンギは周りと距離を取り
他人を優先させる子供でした


人の心の機微に聡い子で
泣いている子供がいると
そっとそばに座り
泣き止むまでただ寄り添っているのを
何度か見た事があります


ジンギの柔らかな笑顔をみた子供たちが
いつしかオニュと呼ぶようになりました


オニュと同時期に入所してきた
子供たちは5人いました


ジョンヒョン ミノ テミン
そして、あなた キー


そして、もう1人女の子がいました


あなた方は寄ると触ると喧嘩して 
だけれど、離れていると寂しいのか
いつも固まっていました

 


あなた方がここに来てしばらくたった頃でしたね


新しい施設長が赴任してきました


あの方は…
子供と暮らしていくには
愛と辛抱だという気の遠くなる方法よりも暴力と恐怖で支配しようとする方でした

 


それは職員にも同様で
子供たちの失敗は私どもの失敗として、
ためらいなく暴力をふるい
恐ろしい暴言を吐き
激しい恐怖を私どもに植えつけました


規律で縛り、私たちは異常さに
気がつかない間に取り込まれていました

 


事件がそのような時に起こったのです


あなたとテミンがトレーに乗せていた
食事をバランスを崩し2人で縺れ合い
床に落としてしまった事がありました

 

 


静寂の中、恐ろしい音を立てて
食器が転がる音がしました


あの方は、2人に近づき平手打ちをしようと手を振り上げました

 


その時オニュが飛び出して来たのです
立ちすくんでいるあなたとテミンの前に立ち、あの子は全身で怒っていました

 


ねえ、キー
オニュと呼ばれたあの子は、火のような一面もあったのですよ
人間は表面だけではわからない
たくさんの顔、善と悪も混在しているのです
私もそうでした 
いえ…
今もそれは、変わらない…

 

 

 

 

あの方はオニュの異様な怒りに圧倒されたのか振り上げた手を下ろしました

しかし、事の成り行きを見ている
他の子供たちの目に気が付いたのか
恐ろしい命令をあの子に言い渡しました

 

 

 

床に落ちた物をお前が全て食べろ
手を使わずに
這いつくばってお前が、食べるのだ

 

 

 

 

 

私は、止める事が出来なかった


あの子は私をちらりと見ました
ああ!私は…私は動けなかった!


私が動けないでいるのを見ると
あの子はその場にしゃがみ込みました


あの子が這いつくばり床を舐め
咀嚼していくのを止める事が出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私こそが本当の悪なのです
恐怖と権力に負けあの子を見捨てました

 

 

 

 

 

 

 

 

施設長は涙を流しながら話し続けた

 

 

 

 

 

 

 


淡々と床を舐め続けるオニュを見て
ジョンヒョンとミノとあなたは
オニュに飛びつき泣きながら
もうやめてと叫びました

 


テミンがあの方に
ごめんなさい、ごめんなさい
もう、やめさせてと
スカートを握った途端
あの方はテミンを振り払い
壁に激突させました


オニュは…
床に落ちた物を食べろと言われても
泣き顔も見せず
決して屈した様子を見せなかった、
オニュはそれを見て豹変しました

あの方に飛びかかり手と足の届く限り打ち付けました

あの方は、完全にタガがはずれてしまいました

 

 


オニュを押さえ付けると首を両手で締めつけ、オニュの顔色が変わっていくのを笑って見ていたのです

 

この後の事をあなた方は覚えているでしょうか?

 

 

 

その時あなた方は、、、あなたと ジョンヒョンとミノは同時に飛び出しました

一斉にあの方に飛びかかり突き倒したのです

 

 

床には先ほどの食事がばら撒かれていて滑りやすかったのです

 

 

 

あの方は突き飛ばされた拍子にテーブルに頭を打ち付け死んでいました