eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

メビウス 10 針の先

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女に礼を言い
このまま調査を続けると言ったが
巧妙に情報を渡すとは明言しないよう
気を配った

女は席を立ったが
キーは動けなかった

 


青池施設は
かつて自分が暮らしていた施設の名前だった


いや、自分だけではない
ジョンヒョン、ミノ、テミン


それから…
それからオニュヒョン
オニュヒョンは今どうしているんだろう

他にもいたような気がしたが
はっきり思い出せなかった


忘れたい記憶が朦朧と浮かび上がってきた

怒鳴り声、争う声、泣き喚く声
何千回もの食事と排泄が繰り返された淀んだ空気の匂い
誰かに縋らなければ生きていけず
誰からも必要とされていない身の置き所の無さ

キーは気分の悪さを抑えたくて
紅茶を頼んだ

暖かな紅茶から立ち昇る香りで
満たされながら
考えてみようとした

ジンギは青池施設の行方不明事件に
興味を持っていた
なぜだ

行方不明になった施設長の
一人息子の事も
気にしていたようだ

ナツという女の人探しの依頼だったはずが
忘れたい自分の過去とジンギがなぜか重なっている…

キーはしばらく迷ったが
直感に従う事にした
紅茶を飲み干すと携帯でテミンを呼び出し
車を持ってくるよう頼んだ


迎えに来たテミンと一度事務所に戻り
支度をするつもりだった

事務所の扉をいつものように確かめると
髪の毛が無くなっていた


全身に鳥肌が立ち
テミンに髪の毛がなくなっている事を身ぶりで伝え
鍵を差し込んだがすでに開錠されていた


行くぞ、とテミンに目で合図したが
テミンは、声を出さず
身ぶり手振りで何か伝えようとしていた

「??」

指紋があるかもしれないから
直接、触るなと言いたいようだった

キーは、テミンを感心して眺め
親指を立てた

ハンカチでドアノブを掴み
今度こそ行くぞとテミンを見た

すると、テミンがまた、激しく身ぶり手振りしてきた
だが、今度は何を伝えたいのか
わからず
キーは必死に伝えようとするテミンを
口を開けて見ていたが
肩をすくめて、わからないと伝えた

テミンは諦めたようだった

ゆっくりと扉を開けて
中を覗き込んだ


部屋はめちゃくちゃだった

大切に育ててきた観葉植物は
倒され土がばらまかれていた

キーの癒しの象徴だった水槽がいくつか
床に落ち
魚達が水たまりの中で弱々しく跳ねていた

「…誰が」

「ねえ、キーヒョン
魚が生きてる

ここで、何かが起きてから、あまり時間が経ってないんじゃない?」

「…ああ、そうだな
テミンの言う通りだ」


顧客の情報は盗まれた様子はなかった


キーは魚たちを掬い上げ
残っている水槽に戻してやりながら
今すぐ出発しようと考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 9 辿る

 

 

 

 

 

 

 


キーは、女が勤めている会社の
雰囲気に合わせて洋服を決めた

女が自分といるのを周りに見られても
仕事上の関係者だと言えるように
配慮した

テミンと交代で張り込み
女の行動パターンを掴み
会社から駐車場に向かう途中に
トライをする事に決めた


女が会社を出て
いつものように駐車場に向かって行く

キーはさりげなく後ろにつき駐車場に入る前に声をかけた

「あの!ちょっとよろしいですか?」


振り向いた女の目により
相手をするべき人間かどうか
自分が、測られているのを感じていた

どうやら合格したようで
女は微笑みながら
「何でしょう」と聞いてきた

キーは勝気で頭の回転の速そうな女を見て直球勝負でいくことに決めた

「ジンギさんの事で伺いたい事があるのです」

女の顔が固まった

「あなたは?」

「失礼致しました、私は探偵です」

キーは名刺を渡した

女は名刺を見つめ
キーをコーヒーショップに誘った


暖かなショップの中で
2人はコーヒーを挟み座っていた


キーは女を観察したが
女もキーを観察していた

「…それで?私はどうかしら?
良い勝負になりそう?」

「素敵な方だと思って目が離せなかっただけです、不躾に見てしまい
申し訳ありません」

「さあ、話に戻りましょう
なぜジンギの話を聞きたいの?
どうやって私の所に来たの?」

キーはジンギ探しの依頼があり
唯一の手がかりが女の名刺だった事を伝えた

「あの子ね、、、
あの子が依頼人なのね」

「………」

「言えないのか…
でも、探偵さんに頼むという事は
本当にあの子も行方を知らないのね…」

女はカップの持ち手を撫でながら
話し出した


「私は、あの子に嘘を聞かせたの
あんまりにも、あの子がにぶいから

ジンギから、あんな視線で見られていたのに気がつかないなんて…

私が欲しくてたまらなかったものを
あの子は最初からぶら下げていた…

久しぶりに嫉妬という気持ちを
味わったわ」

女は独り言のように
喋っており、キーはジンギに惹かれていたこの女が、あの、地味な弁当屋の娘こそがジンギが気にかける女なのだと
直感し、嫉妬した、という事だろうと推量した

「ジンギという男性とは
まだ連絡は取れないのですか?」

「そうよ、私が頼みたい位よ」

「彼に関する事を話して頂く事は可能でしょうか?」

「…いいわよ
仕事に影響があるわけじゃなし
大してお話出来る事もないしね」


女はジンギとの出会いを話し始めた

 

「私が初めてジンギを見たのは
取引先との接待で訪れたホストクラブだったの

私達のテーブルに着いたのが
ジンギだったわ

他のホストと比べてテンションが違いすぎて
目が離せなかった

話しているうちに
お互いの地元が近い事がわかったの

私が生まれ育った場所を彼は良くしっていたわ

当時、小さな街で起きた行方不明事件を
覚えてるかと聞かれて驚いたわ
その話を知っているなんて
本当に私の近くで生まれ育ったんだろうと
思ったし」

女はコーヒーを一口飲み
窓の外を見た

「ジンギは私の名刺を見て
行方不明になっている人と同じ名字ですねって言ったの
その事を覚えてる人がいるなんて
驚いた
行方不明になったのは
私の叔母なのよ」

 

「叔母は事故に巻き込まれ殺されてしまったのかもしれないと警察も動いたわ
だけど、見つからなかった

もうすぐ時効がくるわ」


キーは女の話を聞いて衝撃を受け
体が宙に浮いているような気持ちだった


「どうかしたの?」


動きの止まってしまったキーに
女が聞いてきた

 

「いえ、それで…ジンギは、他に何か聞いてきましたか?」


「……」

ためらう女をみて
キーは女の弱点を突く事にした

「ジンギさんを見つける手かがりになるかもしれません
どんな些細な事でも良いので
教えていただけないでしょうか」

「ジンギが見つかったら私にも教えてくれるわね?」

キーは黙っていたが
正式に契約も交わしていない女に情報を渡すつもりは無かった

女はジンギを諦めきれない気持ちが勝ったらしく話し出した

「行方不明になった叔母には
一人息子がいたの
その子の事を聞かれたわ

昔から暴力的な子供でね
問題を起こしてばかりいたけど
最近のあの子は、完全にイカれてしまったと思うわ

あの子は叔母は殺されたと確信してる。
夢に出てくるんですって

息子として復讐しなさいと
叔母があの子にささやくそうよ

あの子、当時の記録をかなり探していたわ」

「それをジンギに話したんですね?」

「そうよ
でも、会ってすぐにじゃないわ

何回か会って、ジンギになら
話してもいいって思えたから話したの

外で会った時にあのお弁当屋さんにも
行ったわ

ジンギも自分ではわかってなかったわね
あの子を見る自分の目を


お互い他人行儀だったけど
何かあるってすぐにわかったわ

だからプライドを捨ててあの子に
会いに行った時
自分が好かれている事に気がついてもいない鈍感なあの子が憎たらしくて
意地悪したの

ジンギさんと体の関係があるような事を言ってやったの
あの子青ざめてた

実際には私には何も求めなかったわ
私は欲しかったのにな…」

女は独り言のように呟き終えた


「その…

叔母様が行方不明になった施設の名前を教えて下さいませんか」


女は唇を湿らせてから言った
「青池
青池施設よ」

 

 

 

 


ビンゴ

 

 

 

 

 

 

キーはテーブルの下で指を絡め
魔除けのまじないをした

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 8集合

 

 

 

 

 

 

目指す店に近づくと
肉の焼ける匂いと煙が辺りを漂い
ガヤガヤと賑やかに人が行き交っていた


「いらっしゃいませー!」
右肩上がりな明るい発声で
客を歓迎する声が店内のあちこちであがっていた

「…よお」
「来てやったぜ」
「食わしてやるぜ」

「ちょっとちょっと
何、出合頭にマウンティングしてるんですか
はいはい、行きますよ」

「美味しい肉出してよね」
「俺がまずい肉出した事あるか??」


ミノはキーの肩を抱きながら
案内した

 

 

 

個室に通されミノも合流した

「あれえ、オーナーさんは
働かなくていいの~」

「うちのスタッフは優秀だ!
全幅の信頼を置いている!
それにここは共同経営だ
真のオーナーはジョンヒョンだ」

「ああ、そうですか、
ミノヒョンがいると焼き方にうるさくて
食った気がしないんだよね~」

「テミン!何度言ったらわかる!
最高の肉には最高の焼き方があり
最高の焼き方をもってして
最高の味が引き出されるんだ!
お前もここで働け!
俺が肉への愛を叩きこんでやる!」

「暑苦しいよ、ミノヒョン」
テミンが綺麗に微笑みながら
言うとミノは大きな目を瞠り
口をパクパクさせていた

「嘘だよ!ここの肉は最高です
ここの肉食べたら
他所の肉は食べられたもんじゃない!
これ、本当~」

「……テミンーーー!
ヒョンがたーくさんっっ
焼いてやるからな!
キーも、ついでに食ってけよ」

「ついでって何よ
俺もたくさん食べるからね」

「ジョンヒョンは?」

「今、食材買いに行ってくれてる
ヒョン、八百屋さんに人気でさ
めちゃくちゃ安く仕入れてくる上に
おまけも豪華なんだよな~
ま、こっちもそれなりにもてなしてるけどね」


3人が笑いながら食事を楽しんでいると
ジョンヒョンが入ってきた

「コンコン~
自分で言っちゃうよ~

よう!元気?」

「昨日も会ったじゃん」

「挨拶だろ~たくさん食ったか?
もっと持ってこようか?
テミン、お前はもっと食え
細すぎるぞ」

「いいの、適正体重です」

「テミンが…テミンがこんな難しい単語を言えるようになったぞ!!」


うわあああとテミン以外の3人が
肩を抱き合い泣き真似をした


「……それで、キーヒョン
さっきの依頼人の話だけど教えてよ」

「ああ、うん…
ジョンヒョンもミノも半分はうちのスタッフだから聞かせるけど内密に」

「わかってるよ」

キーは
ナツが話していった内容を伝えた

「メンチカツが好きなジンギね~」

最初の手がかりが名刺を置いていった
女にある事を教え
2人に見せた

「あれ、この人、知ってるかも」

「「何で⁉︎」」

「うちの店で部下引き連れて忘年会していった人だと思う
プライベートでも良く来るよ
なあ、ミノ?

男とも来てたな」

「…それって」

「「「メンチカツが好きなジンギ?!」」」


「ええええー!
何⁈俺達、依頼人の探してる男
見てんのー?」

「ミノ!!
人相を書け!特徴を書け!」

「ええええー
覚えてないよ~~」

 

 

 

 

 

 


「なるほど…

 

 

 

 

①物静かで喋らない
②女ばかり話していた
③何を考えているのかわからない顔だった
④黒いスーツを着ていた

 


なるほど…」

 

 

 

 

4人は黙り込んだ

 

 

 


「……女の所に行きますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス7 逡巡

 

 

 

 

 

 

 

あの時のジンギは本当に優しかった
愛されているような気持ちになった

 


ナツは乱れきった自分を思い出し
下半身が熱く反応するのを感じたが
顔に出さないように
全神経を張り詰めた

私の尋常でない様子を見て
嫌になったんだろうか

あの時からジンギは姿を消した

 

キーは依頼人が思い出に耽っているのを感じ
全て話していないだろうと思っていた


立ち上がって
お気に入りの
ミッキーマウスの模様のついた
魚の水槽に近寄り女が話すのを待っていた

 


「…あの、調べていただけますか?」

 

「できるかどうか
ちょっと周辺を探ってみたいと思います
お返事はそれからでもよろしいでしょうか」

目を見ながら落ち着いた笑顔で話しかけた

 

キーはナツから聞き出せる事を聞き出し
ナツに会いに来たという女を探す事から
始めると決めた

 

依頼人が帰りソファに寝そべっていると
ドアをガンガン叩く音がして
起こされた

「どちら様ですか?」

「俺!わかるでしょ」

「インタフォン使って顔を確認させて下さい」

「もう!声でわかるでしょ?」

そういいながらもインタフォンのブザーを鳴らしてカメラを覗き込んだ


鍵を開錠し扉を開けると細身の男が立っていた

「ねえ!いい加減俺にも鍵ちょうだいよ」

「ダメだ、危険は増やさないに限る」

「何言ってんの
キーヒョンの用心深さは異常だよ?
スナイパーにでも狙われてんの?」

「黙れ、テミン
生意気言うと二度と服を貸さないぞ
この事務所は絶対に誰かが浸入してきた事がある!
俺にはわかるんだ
用心に越した事はない

っておい!
お前ー!今日は全身上から下まで
俺の服じゃないかよー」

「いいじゃん、毎日着替えても
着れないくらい服があるんだからさー
ねーヒョン?

今日の俺のコーディネートどうかな?」


「まったくぅ

まあ…そうね
帽子はコッチにしてコートはこっちにしたら
もっといいんじゃない?」

「おお!さすがキー様だね
決まるねえ~~!」

「でっしょーー」

 

2人はパーテーションで仕切られた
キーの衣装部屋で騒いでいた
キーは家に入りきらない洋服を
事務所にも置いていた

壁一面にコートや帽子、バッグや靴が置かれていた

「あれ?お客様来てたの?
依頼人?」

「ああ、うん、とにかく
飯食いに行こーぜ
そこで詳しく話すからさ」

「おっけー!
では、ヒョンコーディネートで
出発しますかあーー!」

 


キーは鍵を二重にかけ
いつものようにドアと壁の間に
自分の髪の毛を貼り付けた

それは、目線から外れた上部にあり
普通セットした人間にしかわからないものだった

「ねえ、キーヒョン
それ、意味あんの~?」

「テミン、これは目印だ
この髪の毛が無くなっていたら
誰かがこのドアを開けたという証拠だ」

「今までそんな事なかったじゃん
キーヒョンの髪の毛、無くなっちゃうよ?」

「…次はお前の髪を貼り付けてやる」

「えええ~絶対やだからね~」

 


2人は外の眩しい光の中へ
歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス6 飛沫

 

 

 

 

 

 

 

 

その晩、ナツの元にジンギが現れた

 

連絡が取れなくなっていると聞いていた
ジンギが自分の元に現れた事に
ナツは驚いて立ち尽くした

 

ジンギは辺りを見渡し玄関に滑り込むと
カチャリと鍵をかけた

 


「ナツ…来ない方が…良かった?」


言葉の出ないナツにジンギは不安そうに尋ねた

その寂しげな顔にナツの胸は打たれた

 


ぶんぶんと頭を振り
「ジンギさん…会いたかった」
ジンギの胸に顔を寄せた

 

 

会いたかった 会いたかった 会いたかった

 

 

 

その気持ちをこめてジンギを包んだ

訪ねて来た女の言葉がよぎったが
ナツは今ここにいるジンギをただ信じた


分厚いジンギの身体
ジンギの匂い
背中に腕を回して頬を胸に寄せ
心臓の脈打つ鼓動を聞いた

「…ナツ」
低い声が骨を通して聞こえ愛しさが溢れた

ジンギを自分の物にしたい
自分だけの物にしたい

 

「ジンギさん…抱いて欲しい」

 


ナツのストレートな言葉に
ジンギは目を瞠った


ナツはジンギの手を引き布団へ誘った

シュルシュルと衣擦れの音を立てながら
洋服を1枚1枚脱ぎ去り
全てを見せ立ち尽くした

 

 

「ジンギさん…お願い…」

 

 

ナツはジンギの手を取り
自分の乳房に導いた
温かく大きな手を感じ
子供が欲しい
ジンギの子供が欲しいと
湧き出るように思った

 

ジンギの全てを体に取り込み
細胞となる飛沫を私だけに注いで欲しい


その思いがナツを焦らせた
ジンギに抱きつき
ワイシャツのボタンをこじあけ
ベルトを外そうとしたが手が震えた

 

「…ナツ、落ち着け
どーした」


顔を上げたナツを見てジンギは
息を呑んだ
ナツが泣いていた


瞳から涙を盛り上がらせ静かに泣いていた

 

「ナツは…泣き虫だな」

 


ジンギの手がナツの頬に伸び優しく涙を拭った

 

 

「ナツ…抱くよ
だから泣くな」

 

 

 

「ジンギさん…何をしてもいい…
だけど…優しくして…」

 

 

敷かれた布団の上で
ジンギを見上げながらナツが言った


緊張から強張っていた身体は
ジンギのキスを受け
柔らかく解け従順になっていった

ジンギとのキスが好きだった
暖かく優しい気持ちが流れこむのを感じ
いつまでもしていたいと思う位に好きだった

 

 

 

 

 

 


その晩、ナツは乱れまくった
ジンギはナツの悦ぶ場所を指と舌で
執拗に攻めた


優しく、くすぐられるように、
ぬめりを指先で触れられ
暖かな舌で舐めあげられながら
敏感な乳首を弄られると
ナツはたまらずに腰を揺らめかせ
全身に熱を灯らせた


ジンギが私にこんなに
いやらしい事をしている、
そう思うとナツはますます興奮を感じたが
ふと、目を開けた時
ジンギはこちらをじっと見つめており
羞恥心でいたたまれない気持ちになった

ジンギはゆっくりと口づけを落とし
体重をかけてのし掛かり
ジワジワとナツに浸入してきた

 

待ち望んだ刺激にナツは呻き声をあげ
ジンギはナツを強く抱きしめ
体全体でナツを揺すった

背後からも挿入された
背中を手で押され、しなるように腰をあげナツの両腕をまとめて前方に伸ばすよう持って行き
猫が伸びをするかのような姿勢を取らされた

 

 


「…汗」

 


耳元でジンギの低い囁きが聞こえ首筋が
舐めあげられた
「ああっ」ナツは震えた

2人の行為は密やかに布団の上で
熱を放ち行われており
カーテンの隙間から差し込む
月の灯りがぼんやりと2人の動きを
浮かび上がらせていた

 

ジンギの手が
ナツの背中や乳房、腰を優しく撫で回し
露わになっている首筋に、肩に、背中に、口づけが落とされた


挿れられながら
顎を取って背後からキスをされると
愛していると言われるようで
ナツの身体は喜びに震えた


ジンギはナツを仰向けにし
片手の指と指を絡ませ
ナツの顔を見ながらゆっくりと挿れてきた

 

ジンギの黒い瞳がナツだけを見つめており
2人はしっとりと汗をかいていた


ナツは空いている片手で
ジンギの腕から手首に手を走らせ
自分とは全く違う太い手首や
腕の筋肉を触り
力強い男の体を感じて
征服される悦びを感じていた

 


「ジンギさん…中に…出して下さい」

 

 

一瞬、動きが止まってナツとジンギは視線を絡ませた


その途端、ジンギの顔が歪み
今までとは比べ物にならない位に
激しく腰を打ち付けられた

ナツは激しく揺さぶられながら
下半身にじわじわと
確実に熱が集まるのを感じた

やがて熱はナツの脳内まで達し
ジンギを受け入れている場所から
太ももにドクドクと痙攣をおこし
声が漏れないよう
深い口づけをジンギにされながら
ナツは達していた

 

何もわからなくなり
何も考えられなかった
快楽に喘ぎ 仰け反りながら

 


私だけに注いで欲しい

 

 

あなたの全てを

 


私だけに注いで欲しいと思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



メビウス 5 影

 

 

 

 

 

 

 


それから、時々ジンギはナツのアパートに
ふらりと現れた


抱かれたのは、あの時一度きりで
それ以来、ナツには手も触れなかった

ナツはジンギが来るのを待ち
いつでも、もてなせるよう
部屋に気を配り食材も補充していた

だが、ジンギには見えない壁があり
ナツはどうしていいか
わからなかった

 

 

ある時店に垢抜けた綺麗な女が現れた
ジンギが連れていた女だった
ナツに聞きたい事があるという

店主に断りを入れ
店の外のチカチカ瞬く街灯の下で立ち話をした

「…なんの御用でしょうか」

「お仕事中に、ごめんなさい
ジンギ…さんの事で伺いたい事があるの」

「……」

「あなた、ジンギさんとどういうご関係?」

ナツは不躾な質問に怒るでもなく
真面目に考えた

私とジンギさんはどういう関係なんだろう
一度だけ体を繋げたが
もはや、それも本当にあった事なのか
ナツの中では希薄になっていた

「私と…ジンギさんは…
ただの知り合いです」

ナツは考えた末にそんな事を言っていた

「…嘘」


女はナツを見据えていた

「最初に言っておくけど
私はね、ジンギが好きなの」

ナツの顔を真っ直ぐ見ながら言った

「あなたは昔からの知り合いか何かなの?」

「…いいえ」


「そう、そこは私と同じなのね」

 

「お仕事中にお邪魔しているから
手短に言うわ
ジンギと連絡が取れなくなったの
あなたの所に彼は来てない?」

「お店にはいらしてません」

「そう…」

ナツの目をじっと見つめ

「以前、ここに来た時に
あなた方には何か関係があるんじゃないかと感じたの

それで、来てみたわけ」

 

「もし、ジンギが来たら
私に連絡して欲しいの

私が彼の力になりたがっている、それから…

それから、あの事はもう気にしてないって」


女は聞かれもしないのに
喋り続けた

「あの事ってね、ジンギって
時々、手荒に私を抱く時があるのよ
でも、私は気にしてない

そういう意味よ」

ナツから視線を逸らさず
美しい笑顔で秘密を分け合うかのように
話してきたが
ナツはどう反応すればいいのか
わからず黙っていた

女は話し続けていたが
ナツには途切れ途切れにしか
頭に入ってこなかった

ジンギさんは
この綺麗な女性を抱いていた
好きなんだろうか
手荒な抱き方をする位
何度も愛し合ったのだろうか

私に手を出さなかったのは
私に魅力がなかったからなんだろうか

自分の考えに集中していたナツは
女に腕を揺さぶられ
ハッとした

 

 

「帰るわ
もし、ジンギから連絡があったら
私に教えて欲しいの
お礼はさせていただくわ
仕事のお邪魔をしてごめんなさい」

女は車に乗り込み走り去った

 

ジンギさんと連絡が取れなくなっている…


私は本当に何も知らない
ジンギさんがどんな時間を過ごしているのかも…


女から渡された名刺を見つめながら
手荒い抱かれ方とは
どんな抱かれ方なんだろう

あの綺麗な人にジンギさんは欲望を抱いたんだろうか

また、その思考に戻っていき
ナツの胸に熱い炎が急激に燃え盛った
ジンギの唇や体を這う手を想像してしまい
頭を振って思考を止めた

やめよう
考えても仕方のない事だ

 


ジンギさんは、どこにいるんだろう

 


ナツは電灯がチカチカと映し出す
自分の影を見つめ仕事に戻らなければと
ぼんやり思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス 4 ナツ

 

 

 

 

ナツはジンギをアパートに連れ帰った
駐車場には雑草が手付かずに繁り
色あせた自転車や三輪車が駐輪場から
はみ出ている
ごく質素な二階建てアパートだった


鍵を回し扉を開けてジンギを中に入れた


ジンギが後ろ手で部屋の鍵をカチャリと
かけた音がした


自分の領域であるはずの部屋で
閉じ込められたような気持ちになり胸が激しくざわめいた

靴を脱いで部屋にあがったジンギは
台所と一部屋しかない部屋を立ち尽くして眺めていた

自分の部屋に男がいる事が
見慣れず
朝、置いたままにしてきた
新聞やカップを手早く片付けた


ジンギが部屋の全てを占領してしまったかのような圧迫感をナツに与え部屋が
ひどく狭く思えた

ジンギを座らせると改めて
顔の傷を照明の下で消毒した

傷を丁寧に消毒するナツの手首を掴み
ジンギがナツの目を見た

黙って見つめてくるジンギの視線に耐え切れず消毒薬を片付けようと
立ち上がりかけたが
ジンギに強く引き寄せられ胸に倒れ込んだ

「…ナツ」


名前を呼ばれて見上げると
いつもは無表情なジンギが
優しい顔をしている事に気付き目を瞠った

 


「…ナツを見てると欲しくなる」


優しく瞼ににキスを落とされ
ナツは目を閉じた

 

 

ジンギの手がナツの髪を撫で
頬を包み近々と顔を寄せてきた

体を確かめるように強く抱きしめられ
ジンギに体重をかけられて
押し倒された

この人は誰なんだろう
謎に思った

しかし


ジンギなら いい


そう思っていた