eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

メビウス 10 針の先

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女に礼を言い
このまま調査を続けると言ったが
巧妙に情報を渡すとは明言しないよう
気を配った

女は席を立ったが
キーは動けなかった

 


青池施設は
かつて自分が暮らしていた施設の名前だった


いや、自分だけではない
ジョンヒョン、ミノ、テミン


それから…
それからオニュヒョン
オニュヒョンは今どうしているんだろう

他にもいたような気がしたが
はっきり思い出せなかった


忘れたい記憶が朦朧と浮かび上がってきた

怒鳴り声、争う声、泣き喚く声
何千回もの食事と排泄が繰り返された淀んだ空気の匂い
誰かに縋らなければ生きていけず
誰からも必要とされていない身の置き所の無さ

キーは気分の悪さを抑えたくて
紅茶を頼んだ

暖かな紅茶から立ち昇る香りで
満たされながら
考えてみようとした

ジンギは青池施設の行方不明事件に
興味を持っていた
なぜだ

行方不明になった施設長の
一人息子の事も
気にしていたようだ

ナツという女の人探しの依頼だったはずが
忘れたい自分の過去とジンギがなぜか重なっている…

キーはしばらく迷ったが
直感に従う事にした
紅茶を飲み干すと携帯でテミンを呼び出し
車を持ってくるよう頼んだ


迎えに来たテミンと一度事務所に戻り
支度をするつもりだった

事務所の扉をいつものように確かめると
髪の毛が無くなっていた


全身に鳥肌が立ち
テミンに髪の毛がなくなっている事を身ぶりで伝え
鍵を差し込んだがすでに開錠されていた


行くぞ、とテミンに目で合図したが
テミンは、声を出さず
身ぶり手振りで何か伝えようとしていた

「??」

指紋があるかもしれないから
直接、触るなと言いたいようだった

キーは、テミンを感心して眺め
親指を立てた

ハンカチでドアノブを掴み
今度こそ行くぞとテミンを見た

すると、テミンがまた、激しく身ぶり手振りしてきた
だが、今度は何を伝えたいのか
わからず
キーは必死に伝えようとするテミンを
口を開けて見ていたが
肩をすくめて、わからないと伝えた

テミンは諦めたようだった

ゆっくりと扉を開けて
中を覗き込んだ


部屋はめちゃくちゃだった

大切に育ててきた観葉植物は
倒され土がばらまかれていた

キーの癒しの象徴だった水槽がいくつか
床に落ち
魚達が水たまりの中で弱々しく跳ねていた

「…誰が」

「ねえ、キーヒョン
魚が生きてる

ここで、何かが起きてから、あまり時間が経ってないんじゃない?」

「…ああ、そうだな
テミンの言う通りだ」


顧客の情報は盗まれた様子はなかった


キーは魚たちを掬い上げ
残っている水槽に戻してやりながら
今すぐ出発しようと考えていた