しゃいに兄弟の砂時計 65
十一月~冬囲
「ただいまあー!
ヒョーン」
ミノがずんずんと
居間に入っていくと
テミンが身軽に飛んで来て
シーっと人差し指を立ててきた
何??と声を出さずに問うと
テミンはコタツを指さした
そこには背中を震わせながら
俯いているジョンヒョンがおり
驚いたミノは近寄った
すると、口を手で覆い
目に涙を貯めたジョンヒョンが
黙れと指でジェスチャーをしてきた
ジョンヒョンの影から
コタツで熟睡しているオニュが見える
オニュは座布団に頭を乗せ
こちらを向いて横向きになり
安心しきって寝ていた
クククと肩を震わせながら
ジョンヒョンが指さす先には
オニュの手があり
小指が赤く塗られている
あっ!と口を開いたミノに
ジョンヒョンの手が伸びる
その手を外し
「何やってんだよ~」
「可愛くしてあげてる」
「ええ!?」
「キーのマニキュア」
ヒソヒソ声で交わされる会話は
ッゴ、というオニュのいびきで
一時中断された
ジョンヒョン、ミノ、テミンの
見つめる中
オニュはすやすやと眠っている
沈黙を破り
「次、何色にする?」
「やめろよ~」
「大丈夫だって
後でちゃんと教えるから」
「ラメがあるっ」
無防備なオニュの指先に
マニキュアを近づけ
慎重に塗るジョンヒョン
「フゥ~
腹筋使うぜ...
早く大声で笑いたい...
次、何にしよ~かなあ」
「中指からは
目に入るから透明がいいんじゃない?」
「ミノ~お主も悪よの」
「さすが、何にでも全力ミノヒョン」
三人のいたずらな弟に囲まれ
オニュの指先は
着々と艶めいていった
「なんか、くせえな
テミナ、窓開けて」
「寒い~」
「あ!そうだ!
今、商店街で餅、配ってんだよ
それ言おうと思ったのに!」
「何だって?
早く言えよ!ミノ!
行くぞ!」
「え、でも、オニュヒョンは?
指の事言わなきゃ」
「...大丈夫だろ
行って帰ってくるまで
寝てんじゃね?
ほら!テミンも行くぞ!」
「ええ~俺も?寒いじゃん」
「命令だ!
餅だぜ、テミン
はい!動いて動いて」
ッゴ、と聞こえる
オニュの幸せそうないびきを背に
三人はバタバタと家を飛び出した