eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

しゃいに兄弟の砂時計 29

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七月~向暑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


帰り際
またもや塾の方針に
背いた事が知られた
ジョンヒョンは塾長に呼び出された

 


君の個人的信念で
成績の上がらない者を
伸ばせるのか


むしろ、可能性を潰しているとは
思わないか

 


問いかけられたが
ジョンヒョン自身にも
答えがわからなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


電車に揺られ
駅に着くと雨がふっていた

 

 


人々は色とりどりの傘を広げ
歩いている


唐突に話の情景が浮かんだ
ジョンヒョンは
鞄を弄りネタ帳を取り出し
急いでペンを走らせた

 


何もかも忘れる
その一瞬が過ぎ
ほぅっ、と吐息を吐き
周りを見渡した

 

 

 


薄暗い駅舎の一角に
向日葵のような黄色いコートが見えた

 


突然、目に飛び込んだ眩しい
色合いに気持ちを奪われ
じっと見つめた

 

 

 


長い髪は艶やかに光り
コートから覗く足はほっそりと美しく
パステルカラーのハイヒールを
履いていた

 


彼女は
(ジョンヒョンは頭の中で
すでに『彼女』と考えていた)
振り落ちる雨を見つめ
どうしようかと逡巡しているようだったが

 


やがて、雨の中に足を踏み出した

 

 

 

 

 


ジョンヒョンは何も考えず
後を追い傘を差しかけた

 

 

 

 


振り返った彼女を見て

息を止めた

 

 


雨粒に縁取られた彼女の髪は
光り輝き
ほっそりとした首筋から見える
白い滑らかな肌は
薄っすらと上気して桃のようだった

 

 

 

 


物問いたげなまぶたを縁取る
睫毛は長く
黒目がちな大きな瞳が
ジョンヒョンを
見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「…綺麗」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


初めて聞く彼女の声に
ジョンヒョンは恋に落ちた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その単語はジョンヒョンの
心に浮かんだ物

 

 

 


そのものだったから