天泣 10
キッチンで食材を切っていると
キーが帰宅した
急いで手を洗い
迎えに走る
おかえりなさい、と呼びかけるハニに
ただいま、と笑うキーは
いつもと同じように見えた
キーがシャワーを浴びる間に
急いで夕食を作り上げ
食卓に並べた
バスローブ姿のキーが
扉を開け入ってきた
「キーさん、どうぞ?」
キーはゆっくりと食卓を
回り込みハニに近づいてきた
先程までとは全く違う雰囲気を纏うキーに
ハニはたじろぎ
椅子の背をぎゅっと握った
首元をきっちり隠すシャツの
ボタンを外される
指を当て
クッと押された場所はキーがハニの体に
残した跡だった
「ハニ 今日 出掛けた?」
はっと体に力が入るのを
止められなかった
「...出掛け、ました」
「そう、どこに?」
「実家です」
「誰と話したの」
「母です」
「他には?」
「今日は...母だけ」
嘘だった
幼馴染みとも会っていた