しゃいに兄弟の砂時計 47
九月~秋冷
しん、と静まり返るしゃいに兄弟の
家の台所に
寝起きのオニュが入ってきた
夜勤明けで眠り続けた為
15時近くになっていた
冷たい水を喉仏を上下させながら
ゴクゴクと飲み干し流しを見た
朝から一度も洗われていないであろう
食器が積み上げられていた
ふっ、と息を吐き
カチャカチャと洗い始めた
「……食洗機、買おうかな……」
手拭きで濡れた手を拭い
『ジョンヒョン』と
袋に油性ペンで書かれた
かりんとうを見ると袋から
3個取り出した
「ジョンヒョンく~ん
いただきます」
小声で呟き
ぽりぽりと、かりんとうを摘みながら
縁側へ行った
「……コタツ、出すかなあ……」
かりんとうのカケラをヨレた
Tシャツから払い落とし
庭へ弾き飛ばした
座布団を持ち出し
ゴロリと横になると
寝ている間に来ていた
メールのチェックを始めた
じっと見つめていた
携帯をぱたり、と降ろし
庭に目を移した
「ただいま~」
テミンが帰ると
部屋の灯りを点けず
窓明かりだけの中
縁側に長々と横になるオニュが
顔だけ振り返って出迎えた
「おかえり」
「暗いじゃん、なんで電気点けないの
節約?
あーー腹減った
なんか食べていいのある?」
「魚肉ソーセージ食っていいぞ」
「やった!」
牛乳も飲もうっと、と
冷蔵庫を覗くテミンに
「なあ、テミン」
「ん~?」
もぐもぐとソーセージを食べる
テミンは幸せそうだった
「…ん、何でもない」
「そお?
俺、今日バイトね
ダンス教室」
オニュはテミンの隣に腰を降ろし
じっと見つめた
「何?
欲しいの?」
眉を上げたオニュに
「一口だけだよ~
こっからここまでね」
ソーセージの食べていい範囲を
指で示すテミンに
オニュは笑いかけ
大きな口を開けてソーセージに
噛み付いた
「ああ!!
もー!ヒョン!!
一口がデカすぎ!もーー!」
眉根を寄せるテミンに
くっつき
弟の体温を感じるオニュは心から
寛いでいた