eggonewのブログ

SHINeeオニュ的な

待ち合わせ 14

 

 

 

 

あれから半年が経った
国の景気は回復するどころか
政治の混乱と天候の異常による食糧難により一般市民は生きるだけで精一杯だった

 

 

 

 

 

働いても働いても
その日を生きていくだけの糧しか得られない

 

 

なぜだ なぜだ なぜだ

 

 

 

いつもの声が囁きかけた

 

 


怒りの波が寄せてくるのを
感じたオニュは
いつものように手足を引き寄せて
体を縮めた

 

「……オニュヒョン、おかえり」

「テミナ、ただいま」

 

 

 

 

 


オニュは2つの人格を持っているように感じていた
テミンを前にした時の自分

生きるために通っている店にいる自分


隙間のように感じられる時間には
どちらの境にいるのか
わからなくなる時があった


食べる物は得られるが
他人のセックスを見て嘔吐する自分は
もう、いない

 


なんでこんな事をしているのだろうと
ぼんやり思う

 

 

 

 

きっかけ…
きっかけは…なんだったろう…

 

 


ゆっくりと前後に動きながらオニュは思い返していた

 

 

 

 

 

雇ってもらったオニュは
カウンターで酒を作り
掃除をし、歌を歌いピアノを弾いた

 

オニュの歌声の素晴らしさに
来客が増えていた


客の要望があれば席に座り相手をした
酔っ払った相手は御構い無しに
話してくるが
オニュは受け流す事が出来ずに
その都度、戸惑った

男色の客もいた
指名されれば断る選択肢はオニュにはない
粘着質に触ってくる男の手に
冷や汗をかきながら耐えていた

救いを求めてオーナーを見たが
微かに首を横に振られ
相手をするしかなかった


今日の客は本気でオニュを
物にしようとしていた
オニュの声に魅せられていて
来店するたびにしつこかった

 

体を密着し色々な事をひそひそと囁いてきた

男の手が股間に伸びファスナーを下ろそうとしながら

「あんたさ、弟いるんだろ?
その子、連れてきなよ
2人まとめて面倒見てやるよ」

耳に囁かれた時

オニュは仰け反りながら立ち上がり
客を見下ろした

表情のない顔からは
白熱した怒りが発散され完全にキレていた

 

こんな感覚は初めてだった
いや、あの時の感覚に似ている

 


暗闇の中 家の灯りを目指して歩いていた時の地面から立ち上る草の匂いを
思い出していた

あの時、俺は

 

 

 

 

 

 

『殺してやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウイスキーボトルを男の頭に振り上げた

男の頭蓋骨に当たった手応えを感じた


切り裂かれた皮膚から血が吹き出し
白いオニュの顔に飛び散った

 

オニュは恍惚とした時間を漂っていた

 

 

 

 

 

殺してやる
殺してやる
コロシテヤル

 

 

 

そのフレーズしか、聞こえなかった